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Effects of sequences of outcomes on decision makings

2017, Nihon Shinri Gakkai Taikai happyo ronbunshu

3. 社会,文化 2A-011 日心第81回大会(2017) 結果の系列が意思決定に及ぼす影響 ○井出野尚 1・坂上貴之2・森井真広2・玉利祐樹3・竹村和久4 (1 徳山大学・2 慶應義塾大学・3静岡県立大学・4早稲田大学) キーワード:意思決定、ギャンブラーズ・ファラシー、ホットハンド・ファラシー Effects of sequences of outcomes on decision makings Takashi IDENO1, Takayuki SAKAGAMI2, Masahiro MORII2, Yuki TAMARI3 and Kazuhisa TAKEMURA4 (1Tokuyama Univ., 2 Keio Univ., 3 Univ. of Shizuoka, 4 Waseda Univ.) Key Words: Decision making, Gambler’s fallacy, Hot hand fallacy 目 的 我々の意思決定には、日々繰り返し行われるといった側面 がある。繰り返し行われる決定は、直前の試行の結果に影響 を受けることが知られている。直前の結果が意思決定に与え る現象としては、ギャンブラーズ・ファラシーとホットハン ド・ファラシーが挙げられる。ギャンブラーズ・ファラシー とは、ランダムに生じる事象の予測をする際に、同じ事象が 繰り返し生起すると逆の事象を予測しやすくなる現象をさす。 また、ホットハンド・ファラシーとは、成功(失敗)という 結果が連続して生じると次も成功(失敗)が生じるだろうと 予測しやすくなる現象をさす。上記の2つの現象は、同一の 結果の系列に対して異なる意思決定傾向を示すことを意味し ており、両現象の規定因は、未解決の問題である。 本研究では、直近の結果を 2 値で表した系列を呈示し、結 果系列による意思決定への影響を検討した。 方 法 質問紙調査は、4 つ問題設定で構成された。本稿では、壺 の中から球を引くという設定の質問項目で構成された問 1 と リスク事象の次年度の発生を予測するという課題を行った問 2 について報告を行う、 調査参加者 東京都内大学学生 138 名(男性 53 名、女性 85 名、平均年齢 21.18 歳、SD=0.76) 。 問 1 8 つの壺が用意されており、各々に白と黒の玉が入って いるが、数は不明であるという設定の下、過去 3 回の玉の出 方を呈示し、次に出てくる玉の色を予測するという課題を行 った。質問項目のサンプルを以下に示した。 過去の結果の系列を 8 パターン作成した。これらの系列は, それぞれ 1 つの壺の中から玉を 3 回引いた結果を表し,左から 順に 1 回目、2 回目、3 回目に引いた結果を示している。各回 ともに引いた玉は壺に戻すことを教示した。各項目に対して、 「次に玉を引いたとき、白と黒どちらが出ると思いますか」 という質問を行った。このとき、黒玉を引いた場合は、1 万 円、白玉を引いた場合は 0 円の賞金を渡すという条件を示し た。また、8 パターンの刺激系列の呈示順、回答欄の黒と白 の呈示順についてカウンターバランスをとった。 問 2 「地震」、 「火山の噴火」 、 「竜巻」、 「食中毒」 、 「麻疹(は しか) 」の 5 個のリスク事象を対象に、各リスク事象について、 過去 3 年の観測データとして 3 つ呈示し、来年に事象が発生 するか(「事象の発生/なし」 )を予測してもらった。 結 果 Fig. 1 に問1の各刺激系列に対する予測結果を、Fig. 2 に は問 2 の「地震」に対する予測結果を示した。また、Fig. 2 では、発生を黒、発生無しを白で示した。 Fig.1 問 1(壺課題)における選択比率 Fig.2 問 2「地震」の発生判断課題における選択比率 問1では、白(はずれ)が 3 個連続した系列において、次 試行に黒が予想された。一方、問 2 では、発生(黒)が 3 回 連続した系列において、次試行に発生無し(白)が予想され た。問 1 と問 2 では、系列の影響が異なることが示された。 説明変数に、各系列の特徴を示す項目として、速度(1 時 点目、2 時点目、1 時点目と 2 時点目の和) 、加速度、黒玉の 数、1~3 回目の玉の種類という 8 項目を用いて、ロジスティ ック回帰分析を行った。結果から、問1では黒玉の数が有意 な負の回帰係数(-0.29, p<.01)が認められ、問 2 では、黒 玉の数が有意な正の回帰係数(0.42, p<.01)を示していた。 これらから、くじ引きの場合と、リスク事象の生起判断の場 合で、系列の影響が異なることが示された。 考 察 実験結果から、問1ではギャンブラーズ・ファラシーの傾 向がみられ、問 2 ではホットハンド・ファラシーの傾向がみ られた。この結果を生んだ要因として、予測する結果の意味 が異なる点が挙げられる。今後の課題として、悪い結果を予 測するくじなどを用いて、結果と系列との関連を検討する。 謝 辞 本研究は、早稲田大学文学部七嶋美里氏の卒業論文のデー タをもとにしている。ここに記して謝意を表します。 ― 122 ―