コンテンツにスキップ

新発田市女性連続殺人事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
新発田市女性連続殺人事件
場所 日本の旗 日本: 新潟県新発田市
日付 2013年8月2日 - 2014年1月15日
概要 5人の女性が男Kにわいせつ目的で襲われ、うち2人が殺害された。
攻撃側人数 1人
死亡者 2人
犯人 男K(犯行当時約30歳)
容疑 強制性交等致死傷罪殺人罪など
刑事訴訟 無期懲役(第一審判決
管轄
テンプレートを表示

新発田市女性連続殺人事件(しばたしじょせいれんぞくさつじんじけん)は、2013年平成25年)8月から翌2014年(平成26年)1月にかけて新潟県新発田市で5人の女性がわいせつ目的で襲われ、うち2人が殺害された事件。

同時期の複数の事件が2回の裁判に分かれて審理されたため、1回目の裁判で無期懲役確定して岐阜刑務所に服役していた男Kに対して[2]、2回目の裁判で再び無期懲役が下される異例の裁判となった[2][3]。一連の事件を同時に審理すれば死刑判決が言い渡された可能性が指摘されており[4]、二重処罰の禁止(一事不再理)が焦点となった[5]

概要 

[編集]

2013年8月2日・3日、新発田市の女性B(当時30代)と女性C(当時10代)が強姦の被害に遭う事件が発生した[6]。その3か月後の11月22日、同市の女性E(当時22歳)が行方不明になった(2014年4月7日に遺体で発見)。翌月の12月6日、同市の女性F(当時20代)が男に連れ去られそうになる事案が発生した。年が明けた2014年1月15日、同市の女性A(当時20歳)が行方不明になった。

女性Aの遺体は2014年4月3日に竹藪の下にある小川で発見された[7]。発見された当時、着ていた服はめくりあがり、ブラジャーはなく乳房が露出していた。女性Aは成人式を終えた直後で、車の中から「ずっと女手ひとつでここまで育ててくれてありがとう。今日、無事に成人式を迎え、人生に一度きりの行事に参加することができました」などと書かれた母親への手紙も見つかった。

一連の事件の共通点として、ほとんどの被害者が車の運転席に座っていた女性だったことが挙げられる[6]。男Kは車に近づいて運転席ドアを開け、刃物を見せて脅したうえで女性を助手席に移動させ、自身が運転席に乗り込んだ。刃物を見せたり首を絞めたりしながら、「服を脱げ」「言うこと聞かねえと、殺すっけなあ」「港連れてけや」などと脅したという。

経過

[編集]
  • 2013年
    • 8月2日 - わいせつ略取・監禁・強姦(女性B)
    • 8月3日 - わいせつ略取・監禁・強姦(女性C)
    • 11月22日 - わいせつ略取・強姦致死(女性E)
    • 12月6日 - わいせつ略取未遂(女性F)
  • 2014年
  • 2020年
    • 2月 - 逮捕(女性A)[7]

裁判

[編集]

1回目の裁判は、2013年の4件(女性B,C,E,F)と2014年の逃亡未遂に関して行われた[3]。2015年12月に新潟地裁で無期懲役(求刑:同)の判決が下され[8]、2018年3月に最高裁で無期懲役が確定した[9][10]

2回目の裁判は、2014年の1件(女性A)に関して行われた[3]。本件についても「同種事案と比較した際に犯行の悪質性が突出しているとは言えない」と結論づけられ、2022年11月に新潟地裁で無期懲役(求刑:死刑[11])の判決が下された[2]新潟地検と被告人Kの双方が一審判決を不服として同月中に東京高裁控訴した[12][13]。2024年5月17日、東京高裁は一審判決を支持し、双方の控訴を棄却した[14]

これらの事件は半年間に連続して起きた事件であるが、事件によって逮捕・起訴のタイミングが異なった。そのため裁判も2回に分かれて行われた。2回目の裁判では、1回目の裁判の結果が影響するかどうかが注目された[5]。検察は「刑の重さを判断する際に事情として考慮することは許される」として[注 1]死刑を求刑したが[11]、「二重処罰の禁止」を踏まえて2回目の裁判でも無期懲役の判決が下された。

加害者

[編集]

加害者は沖縄県石垣市出身の男Kであった[17]。母親の供述によると、男Kは子供のころから現金の窃盗を繰り返し、母親の手に負えない状況だった[18]。2002年に放火未遂で保護観察付きの執行猶予判決を受けるが、今度は2003年に沖縄県で連続強姦事件を起こし、執行猶予が取り消された[18][10]。それにより2004年10月から2012年にかけて約8年間服役していた。

出所後の2013年7月に新発田市に移り住み、同年8月から翌年1月にかけて一連の強姦・殺人事件を起こした[10]。母親は「被害者には本当に申し訳ない気持ちでいっぱい」とした上で「終身刑か処刑になれば、これ以上、被害者を増やすことにならない」と言及している[18]

なお、以上の事件以外にも2つの事件で男Kの関与が疑われたが、逮捕・起訴は見送られた。1つ目は2004年5月に沖縄県で発生した事件で、当時16歳の少女に対する強姦致傷事件である[18]。2つ目は2013年9月に新発田市で発生した事件で、当時24歳の女性Dが遺体で見つかった事件である[6]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 最高裁大法廷は1966年(昭和41年)7月13日に、窃盗事件の上告審判決で「いわゆる余罪について、単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料として考慮することは、憲法に違反しない」と判断している[15][参照:昭和40年(あ)第878号][16]

出典

[編集]
  1. ^ 新発田の女性殺害「早い検挙できなかったか」 新潟県警本部長言及”. 産経新聞 (2014年8月8日). 2022年11月22日閲覧。
  2. ^ a b c 新潟女性殺害、男に無期懲役 同種事案と比較し死刑回避”. 日本経済新聞 (2022年11月18日). 2022年11月22日閲覧。
  3. ^ a b c d 無期懲役が確定していた男に、再び「無期懲役」の判決 “異例の裁判”のポイントを解説”. BSN新潟放送 (2022年11月18日). 2022年11月22日閲覧。
  4. ^ 「同時審理なら極刑も」・新潟新発田女性殺害、2度目の無期懲役判決”. 新潟日報 (2022年11月19日). 2022年12月3日閲覧。
  5. ^ a b 女性殺害事件で無期懲役 新潟地裁 別事件で無期懲役の被告に”. NHK (2022年11月18日). 2022年11月22日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g 首を絞めながら「言うこと聞かねえと、殺すっけなあ」…女性の下着に付着した体液、20歳女性を殺害した“真犯人”は”. 文春オンライン (2022年11月1日). 2022年11月22日閲覧。
  7. ^ a b 20歳女性の遺体はTシャツが胸の上までめくれ…無理やり行為におよび、竹やぶで顔面を水没させた疑いの“男の正体””. 文春オンライン (2022年11月1日). 2022年11月22日閲覧。
  8. ^ 新潟県で女性4人襲い1人死亡 強姦致死罪などで無期懲役”. CHRISTIAN TODAY (2015年12月10日). 2022年11月22日閲覧。
  9. ^ 新発田女性殺害、被告に無期懲役判決…裁判長「同種事案の量刑傾向を見ても死刑は選択できない」”. 読売新聞 (2022年11月18日). 2022年11月22日閲覧。
  10. ^ a b c 「極めて強い異常な性欲の持ち主。行為ができるなら誰でも」20歳女性の遺体は着衣が乱れ胸が露出…“死刑求刑”の真相”. 文春オンライン (2022年11月18日). 2022年11月22日閲覧。
  11. ^ a b 新潟女性殺害で死刑求刑 39歳男「更生期待できず」”. 日本経済新聞 (2022年11月7日). 2022年11月7日閲覧。
  12. ^ 新発田市女性殺害事件 無期懲役の判決に対して検察側が控訴”. BSN新潟放送 (2022年11月30日). 2022年11月30日閲覧。
  13. ^ K被告本人も控訴 新発田市女性殺害事件の裁判員裁判で無期懲役の判決”. BSN新潟放送 (2022年11月30日). 2022年11月30日閲覧。
  14. ^ “新潟の女性暴行殺人、東京高裁も無期懲役 別事件ですでに無期確定”. 朝日新聞. (2024年5月17日). https://www.asahi.com/sp/articles/ASS5K0Q2WS5KUTIL00KM.html 2024年5月18日閲覧。 
  15. ^ 朝日新聞』2015年10月30日名古屋朝刊第一社会面37頁「裁判員、情状に考慮も 闇サイト殺人で無期確定 行動・性格知る資料に」(朝日新聞名古屋本社 斉藤佑介) - 堀慶末闇サイト殺人事件の刑事裁判で無期懲役が確定後、同事件以前に起こしていた碧南市パチンコ店長夫婦殺害事件などの余罪で起訴され、そちらの刑事裁判で死刑確定)の関連記事。
  16. ^ 最高裁判所大法廷判決 1966年(昭和41年)7月13日 刑集 第20巻6号609頁、昭和40年(あ)第878号、『窃盗被告事件』「起訴されていない犯罪事実を量刑の資料として考慮することと憲法第三一条第三九条」、“起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮することは許されないが、単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料としてこれを考慮することは、憲法第三一条、第三九条に違反しない。”。
  17. ^ 新発田女性殺害 18日判決/下 「極刑に」遺族訴え 被告、最後まで否認”. 毎日新聞 (2022年11月17日). 2022年11月22日閲覧。
  18. ^ a b c d 新発田の強姦 被告母、極刑望む供述「被害者に申し訳ない」 新潟”. 産経新聞 (2015年11月18日). 2022年11月22日閲覧。