マトリックス
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マトリックス(あるいはマトリクス)とは、元来「母体・基盤」を意味する言葉である。この言葉が指す具体的な事象・事物について、以下に述べる。
意味
[編集]本来は「子宮」を意味するラテン語(Mater)に由来するMatrixの音写で(英語では「メイトリクス」)、そこから何かを生み出すものを意味する。この「生み出す機能」に着目して命名されることが多い。また、子宮状の形状・状態に着目して命名される場合もある。
日本語にあえて翻訳する場合は「基盤」「基質」「発生源」「母体」「鋳型」などの訳語が当てられているが[1]、ラテン語の原語の「子宮」「母体」から強く感じられる「ものを生み出す機能」のニュアンスが伝わりにくく、結局、カタカナで「マトリックス」と表記されることが多い。
生物学や医学では「間質」という言葉も使われている。例:細胞間質
材料工学では「母材」、鉱物学では「母岩」という訳語も使われている。例:複合材料の母材
用例
[編集]具体的な用例としては次のようなものがある。その他、派生する用例については「マトリックス (曖昧さ回避)」を参照のこと。
- 自然科学
- ミトコンドリアの内膜で囲まれた基質のこと。
- ウイルス粒子のエンベロープとヌクレオカプシドの間に基質のように埋め込まれた蛋白質のこと。
- マトリックス支援レーザー脱離イオン化法やFAB法を用いる質量分析において、ターゲット化合物のイオン化を支援する化合物。
- マトリックス分離法 - 物理化学において、ラジカルなどの不安定な化学種を低温で不活性な固体に単離して、分析する方法。
- 分析対象成分と共存する他の成分。分析対象元素に干渉を及ぼし分析結果に影響を及ぼすことがある。
- 線形代数学における行列。
- 電子工学
- 多重チャネルの入力信号を混合した信号を記録や転送をした場合に、混合された記録や転送の信号から「分離して元の多重チャネル信号を再生する」(例えばFMステレオ方式、4チャンネルステレオなどに用いられる)。
- オーディオ
- 具体的な例としてはマトリックス5.1ch。マスターが2chステレオのサウンドをDolby Pro LogicIIというマトリックスデコード技術を用いて擬似的・仮想的な5.1chサラウンドへ拡張することでマトリックス5.1chのサウンドができ上がる。このように元(マスター)が5.1chでないサウンドを擬似的に5.1ch化させたサウンドをマトリックス5.1chと称することがある。対義的なものとしては、元から5.1chのサウンドであるディスクリート5.1chが挙げられる。(例:ドルビーデジタル5.1chやDTS5.1ch、LPCM5.1chなど)
- 表組み
- 表(テーブル (情報))は、視覚的な情報伝達法の一形態であり、データを並べる手段である。階層型マトリックスを用いて、データの集合の論理的構造を視覚的に表現する。
- フィクション
- SFドラマ『ドクター・フー』(1963年-)88話『Deadly Assassin』(1976年)に登場する用語。知識が集積された仮想空間のことを「マトリックス」と呼んでいる。
- ウィリアム・ギブスンのサイバーパンクSF小説『ニューロマンサー』(1984年)、『カウント・ゼロ』(1986年)、『モナリザ・オーバードライブ』(1988年)、『記憶屋ジョニィ』(1981年)、『クローム襲撃』(1982年)、あるいは記憶屋ジョニィを基にした映画『JM』Johnny Mnemonic(1995年、米国)での用語。それらの作品において、コンピューター・ネットワーク上のサイバースペース(電脳空間)に築かれた「仮想現実空間」、人類の全コンピューター・システムから引き出されたデータの「視覚的再現」、「共感覚幻想」のことを「マトリックス」と呼んでいる。
- 聖悠紀の漫画作品『超人ロック』シリーズにおいて、超能力者が他人に変身するときに、他人の身体からコピーして自分の体を作り変える遺伝子情報を「遺伝子マトリクス」と呼んでいる。
- 『ロボテック』・シリーズに於いて、プロトカルチャー(資源)を発見したゾル人の科学者「ゾア・デリルダ(Zor Derelda)」が シアン・マクロス級・ネームシップ(≒1番艦) (Sian Macross)に隠匿して太陽系第三番惑星(地球)に送り込んだものとされており、「プロトカルチャー・マトリックス」なしには、「プロトカルチャー(資源)」の再処理ができないことから、シリーズ中で重要なマクガフィンとしての役割を果たすことになり、『ロボテック: シャドウ(シャダウ)・クロニクル』(Robotech: The Shadow Chronicles、邦訳例「影の年代記」)でも重要な役割を果たす。
マトリックスまたはマトリクスを使った熟語
[編集]- カラーマトリクス - 映像信号の変換係数。
- 細胞外マトリクス - 細胞の外に存在する超分子構造体。
- ドットマトリクス - ドット(点)の集まり。
- マトリックスコンバータ - 電力変換装置。
- マトリクススイッチ
- マトリックススイッチャ - マトリクススイッチを用いた電気信号の切り替え装置。
- ネイルマトリックス - 爪母。爪の付け根。