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'''大アマゾンの半魚人''' ({{en|'''''Creature from the Black Lagoon'''''}}) は、[[1954年]]に製作された[[アメリカ合衆国|アメリカ]]のSF[[ホラー映画]]。[[モノクロ]]作品。
'''大アマゾンの半魚人'''』(だいアマゾンのはんぎょじん、{{en|'''''Creature from the Black Lagoon'''''}}は、[[1954年]]に製作された[[アメリカ合衆国の映画|アメリカ合衆国]]の[[SF映画|SF]][[ホラー映画]]。[[モノクロ]]作品。


== ストーリー ==
== 解説 ==
[[File:Famous Actress Who Later Portrayed an FDA Chemist (FDA 124) (8205683361).jpg|thumb|220px|right|映画の一場面。右はヒロインの[[ジュリー・アダムス]]。]]
アマゾンの奥地探検中にカール・マイア博士により、[[デボン紀]]の地層から水かきのついた手の化石が発見された。報告を受けたブラジルの海洋生物研究所から、所長のウィリアムズ博士と魚類学者のリード博士、所長助手のケイ・ローレンスが調査に向かうが、マイアのキャンプの留守をあずかる現地人人の無残な死体が発見される。
本作品に登場するモンスター・[[ギルマン]](「鰓のある人間」の意)は、怪物映画の老舗である[[ユニヴァーサル映画]]が[[ドラキュラ伯爵]]、[[狼男]]、[[フランケンシュタインの怪物]]に続くオリジナル・モンスターとして考案したモンスターである<ref name="ume">『ホラー・コレクション』、pp.207-209</ref>。アメリカでは[[立体映画#種類|アナグリフ方式]]による[[立体映画|3D映画]]として公開されたが、日本では2Dのみ上映された<ref name="thm3">『The horror movies』3、p.66</ref>。「古代生物と現代文明の接触によって起きる悲劇」<ref name="lan188"/>、「人間の女性に恋をした半魚人の悲恋」<ref name="ume"/><ref name="thm3"/>の2点で、過去に制作された『[[キングコング (1933年の映画)|キングコング]]』との類似性が指摘されている。当時制作された3D映画群の中では最も興行的に成功した作品で、2つの続編が制作された<ref name="lan188">ランディス『モンスター大図鑑』、p.188</ref>。


水中シーンを除いて、作品の撮影は[[フロリダ州]]の[[ワクラスプリングス州立公園]]内の湧水地で行われた<ref name="lan188"/>。半魚人のスーツアクターは主にベン・チャップマンが務め、水中シーンでの操演は後に『[[007 サンダーボール作戦]]』で水中シーンの監督を手がけるリコウ・ブラウニングが務めた<ref>ランディス『モンスター大図鑑』、p.190</ref>。メイクアップとしてクレジットされているのはユニヴァーサル映画のメイクアップチーフである[[バド・ウエストモア]]のみだが、実際にはジャック・キーヴァンが大半の作業を担当していた<ref>ランディス『モンスター大図鑑』、p.303</ref>。キーヴァンのデザインによる半魚人のデザインは人気を博し、続編として『[[半魚人の逆襲]]』『''The Creature Walks Among Us''』が制作された<ref>石田『図説モンスター』、p.45,106</ref>。映画監督の[[ジョー・ダンテ]]は、本作に登場するギルマンの造形美、人間らしさを備えた性格を高く評価している<ref name="lan62">ランディス『モンスター大図鑑』、p.62</ref>。物語は後に制作されるモンスター映画の原型の一つとなり、『[[モンスター・パニック]]』『[[怪人スワンプ・シング 影のヒーロー]]』などの亜流作品を生み出した<ref name="thm3"/>。
一行は現地人が「魔物が住む」と言う、化石発見された黒い入江を潜水調査するが、ウィリアムズとリードが不在間、泳いでいたケイは人体ながらも全身に鱗を持つ怪物に襲われる。ケイ危うく難を逃れるが、リードは入江に毒物を流し、仮死状態に陥っていた怪物船に生け捕りにすることに成功する。


[[ビリー・ワイルダー]]監督の『[[七年目の浮気]]』([[1955年]])で[[マリリン・モンロー]]のスカートが地下鉄の風でめくれ上がる有名なシーンがあるが、これは[[トム・イーウェル]]演ずる主人公とモンローが本作を観た後の映画館前で起こるという設定である。
しかし、息を吹き返した怪物・半魚人は復讐心に燃え、船の関係者多く殺し始める。やむなくウィリアムズら一行は船を引き帰させようとするが、入江は半魚人の作った防壁でに封鎖されていた。防壁を排除しようと潜水作業を行ったウィリアムズは半魚人に殺されるが、結局、半魚人はマイアの放った銃弾に痛手を受け、入江深く消えていった


== 解説 ==
== ストーリー ==
アマゾンの奥地探検中にカール・マイア博士により、[[デボン紀]]の地層から水かきのついた手の化石が発見された。報告を受けたブラジルの海洋生物研究所から、所長のウィリアムズ博士と魚類学者のリード博士、所長助手のケイ・ローレンスが調査に向かうが、マイアのキャンプの留守をあずかる現地人2人の無残な死体が発見される。
本作品に登場するモンスター・{{仮リンク|ギルマン|en|Gill-man}}(「鰓のある人間」の意)は、怪物映画の老舗である[[ユニヴァーサル映画]]が[[ドラキュラ]]、[[狼男]]、[[フランケンシュタインの怪物]]に続くオリジナル・モンスターとして考案したモンスターである<ref name="ume">『ホラー・コレクション』、pp.207-209</ref>。[[立体映画#種類|アナグリフ方式]]による[[立体映画|3D映画]]として公開されたが、日本では普通上映された<ref name="thm3">『The horror movies』3、p.66</ref>。「古代生物と現代文明の接触によって起きる悲劇」<ref name="lan188"/>、「人間の女性に恋をした半魚人の悲恋」<ref name="ume"/><ref name="thm3"/>の2点で、過去に制作された『[[キングコング (1933年の映画)|キングコング]]』との類似性が指摘されている。当時制作された3D映画群の中では最も興行的に成功した作品で、2つの続編が制作された<ref name="lan188">ランディス『モンスター大図鑑』、p.188</ref>。


化石発見場所である黒い入江をウィリアムズとリードが潜水調査して不在となっている間、現地人が「魔物が住む」というそこで泳いでいたケイは人の全身に鱗を持つ怪物・[[ギルマン]]に襲われる。ケイ危うく難を逃れたところでリードは入江に毒物を流し、仮死状態に陥っていた半魚人を生け捕りにすることに成功する。
水中シーンを除いて、作品の撮影は[[フロリダ州]]の[[ワクラスプリングス州立公園]]内の湧水地で行われた<ref name="lan188"/>。半魚人のスーツアクターは主にベン・チャップマンが務め、水中シーンでの操演は後に『[[007 サンダーボール作戦]]』で水中シーンの監督を手がけるリコウ・ブラウニングが務めた<ref>ランディス『モンスター大図鑑』、p.190</ref>。メイクアップとしてクレジットされているのはユニヴァーサル映画のメイクアップチーフである[[バド・ウエストモア]]のみだが、実際にはジャック・キーヴァンが大半の作業を担当していた<ref>ランディス『モンスター大図鑑』、p.303</ref>。キーヴァンのデザインによる半魚人のデザインは人気を博し、続編として『半魚人の逆襲(Revenge of the Creature)』『''The Creature Walks Among Us''』が制作された<ref>石田『図説モンスター』、p.45,106</ref>。映画監督の[[ジョー・ダンテ]]は、本作に登場するギルマンの造形美、人間らしさを備えた性格を高く評価している<ref name="lan188">ランディス『モンスター大図鑑』、p.62</ref>。物語は後に制作されるモンスター映画の原型の一つとなり、『[[モンスター・パニック]]』『[[怪人スワンプ・シング 影のヒーロー]]』などの亜流作品を生み出した<ref name="thm3"/>。


しかし、息を吹き返した半魚人は復讐心に燃え、船の関係者を殺し始める。やむなくウィリアムズたちが船を引き帰させようとしたところ、入江は半魚人の作った防壁ですでに封鎖されていた。防壁を排除しようと潜水作業を行ったウィリアムズは半魚人に殺されるが、半魚人はマイアの放った銃弾に痛手を受け、入江深く消えてい
[[ビリー・ワイルダー]]監督の『[[七年目の浮気]]』([[1955年]])で[[マリリン・モンロー]]のスカートが地下鉄の風でめくれ上がる有名なシーンがあるが、これは[[トム・イーウェル]]演ずる主人公とモンローが本作を観た後の映画館前で起こるという設定である。
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== スタッフ ==
*監督:[[ジャック・アーノルド]]
*原案:モーリス・ジム
*脚本:[[ハリー・エセックス]]、[[アーサー・A・ロス]]
*製作:[[ウィリアム・アランド]]
*撮影:[[ウィリアム・E・スナイダー]]
*水中撮影:[[チャールズ・S・ウェルボーン]]
*特殊効果:[[チャールズ・ベイカー]]、[[デビッド・S・ホスリー]]、[[クリフォード・スタイン]]
*音楽:[[ロバート・エメット・ドーラン]]<br />[[ヘンリー・マンシーニ]]<br />[[ミルトン・ローゼン]]<br />[[ハンス・サルター]]<br />[[ハーマン・ステイン]]
*美術:[[ヒルヤード・M・ブラウン]]、[[バーナード・ハーツボーン]]
*メイクアップ:[[バド・ウエストモア]]


== キャスト ==
== キャスト ==
※括弧内は日本語吹替(テレビ版・初回放送1971年8月10日)
{| class="wikitable"
* デヴィッド・リード博士[[リチャード・カールソン (俳優)|リチャード・カールソン]][[家弓家正]]
|-
* ケイ・ローレンス[[ジュリー・アダムス]][[北浜晴子]]
! colspan="2" | 役名
* マイク・ウィリアムス博士[[リチャード・デニング]][[小林修 (声優)|小林修]]
! 俳優
* カール・マイア博士[[アントニオ・モレノ]][[塩見竜介]]
! 日本語吹替
* ルーカス[[ネスター・パイヴァ]][[相模武]]
|-
* トンプソン博士:[[ウィット・ビセル]]([[北村弘一]])
| colspan="2" | デヴィッド・リード博士 || [[リチャード・カールソン (俳優)|リチャード・カールソン]] || [[家弓家正]]
** その他吹替:[[清川元夢]]、[[納谷六朗]]
|-
* 日本語版ナレーション[[大木民夫]]
| colspan="2" | ケイ・ローレンス || [[ジュリー・アダムス]] || [[北浜晴子]]
|-
| colspan="2" | マイク・ウィリアムス博士 || [[リチャード・デニング]] || [[小林修 (声優)|小林修]]
|-
| colspan="2" | カール・マイア博士 || [[アントニオ・モレノ]] || [[塩見竜介]]
|-
| colspan="2" | ルーカス || [[ネスター・パイヴァ]] || [[相模武]]
|-
| colspan="2" | 博士 || || [[北村弘一]]
|-
| colspan="2" | ナレーション || - || [[大木民夫]]
|-
|}
* 初回放送1971年8月10日


==リブート==
== スタッフ ==
* 監督:[[ジャック・アーノルド]]
{{節スタブ}}
* 原案:モーリス・ジム
* 脚本:[[ハリー・エセックス]]、[[アーサー・A・ロス]]
* 製作:[[ウィリアム・アランド]]
* 撮影:[[ウィリアム・E・スナイダー]]
* 水中撮影:[[チャールズ・S・ウェルボーン]]
* 特殊効果:[[チャールズ・ベイカー]]、[[デビッド・S・ホスリー]]、[[クリフォード・スタイン]]
* 音楽:[[ロバート・エメット・ドーラン]][[ヘンリー・マンシーニ]][[ミルトン・ローゼン]][[ハンス・サルター]][[ハーマン・ステイン]]
* 美術:[[ヒルヤード・M・ブラウン]]、[[バーナード・ハーツボーン]]
* メイクアップ:[[バド・ウエストモア]]
'''日本語版'''
* 演出:[[左近允洋]]
* 翻訳:[[宇津木道子]]
* 調整:[[坂巻四郎]]
* 制作:[[グロービジョン]]


== 脚注 ==
== 脚注 ==
89行目: 78行目:


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
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[[Category:フロリダ州で製作された映画作品]]
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[[Category:アメリカ合衆国の3D映画作品]]
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[[Category:ヘンリー・マンシーニの作曲映画]]
[[Category:ハンス・サルターの作曲映画]]
[[Category:南アメリカを舞台とした映画作品]]

2023年12月31日 (日) 08:06時点における最新版

大アマゾンの半魚人
Creature from the Black Lagoon
劇場公開時のポスター
監督 ジャック・アーノルド
脚本 ハリー・エセックス
アーサー・A・ロス
製作 ウィリアム・アランド
出演者 リチャード・カールソン
ジュリー・アダムス
リチャード・デニング
アントニオ・モレノ
音楽 ロバート・エメット・ドーラン
ヘンリー・マンシーニ
ミルトン・ローゼン
ハンス・サルター
ハーマン・ステイン
撮影 ウィリアム・E・スナイダー
編集 テッド・T・ケント
配給 ユニバーサル・インターナショナル
公開 アメリカ合衆国の旗 1954年3月5日
日本の旗 1954年7月12日
上映時間 79分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
興行収入 $1,300,000 アメリカ合衆国の旗
次作 半魚人の逆襲
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大アマゾンの半魚人』(だいアマゾンのはんぎょじん、Creature from the Black Lagoon)は、1954年に製作されたアメリカ合衆国SFホラー映画モノクロ作品。

解説

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映画の一場面。右はヒロインのジュリー・アダムス

本作品に登場するモンスター・ギルマン(「鰓のある人間」の意)は、怪物映画の老舗であるユニヴァーサル映画ドラキュラ伯爵狼男フランケンシュタインの怪物に続くオリジナル・モンスターとして考案したモンスターである[1]。アメリカではアナグリフ方式による3D映画として公開されたが、日本では2D版のみ上映された[2]。「古代生物と現代文明の接触によって起きる悲劇」[3]、「人間の女性に恋をした半魚人の悲恋」[1][2]の2点で、過去に制作された『キング・コング』との類似性が指摘されている。当時制作された3D映画群の中では最も興行的に成功した作品で、2つの続編が制作された[3]

水中シーンを除いて、作品の撮影はフロリダ州ワクラスプリングス州立公園内の湧水地で行われた[3]。半魚人のスーツアクターは主にベン・チャップマンが務め、水中シーンでの操演は後に『007 サンダーボール作戦』で水中シーンの監督を手がけるリコウ・ブラウニングが務めた[4]。メイクアップとしてクレジットされているのはユニヴァーサル映画のメイクアップチーフであるバド・ウエストモアのみだが、実際にはジャック・キーヴァンが大半の作業を担当していた[5]。キーヴァンのデザインによる半魚人のデザインは人気を博し、続編として『半魚人の逆襲』『The Creature Walks Among Us』が制作された[6]。映画監督のジョー・ダンテは、本作に登場するギルマンの造形美、人間らしさを備えた性格を高く評価している[7]。物語は後に制作されるモンスター映画の原型の一つとなり、『モンスター・パニック』『怪人スワンプ・シング 影のヒーロー』などの亜流作品を生み出した[2]

ビリー・ワイルダー監督の『七年目の浮気』(1955年)でマリリン・モンローのスカートが地下鉄の風でめくれ上がる有名なシーンがあるが、これはトム・イーウェル演ずる主人公とモンローが本作を観た後の映画館前で起こるという設定である。

ストーリー

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アマゾンの奥地探検中にカール・マイア博士により、デボン紀の地層から水かきのついた手の化石が発見された。報告を受けたブラジルの海洋生物研究所から、所長のウィリアムズ博士と魚類学者のリード博士、所長助手のケイ・ローレンスが調査に向かうが、マイアのキャンプの留守をあずかる現地人2人の無残な死体が発見される。

化石の発見場所である黒い入江をウィリアムズとリードが潜水調査して不在となっている間、現地人が「魔物が住む」というそこで泳いでいたケイは人型の全身に鱗を持つ怪物・ギルマンに襲われる。ケイが危うく難を逃れたところでリードは入江に毒物を流し、仮死状態に陥っていた半魚人を生け捕りにすることに成功する。

しかし、息を吹き返した半魚人は復讐心に燃え、船の関係者を殺し始める。やむなくウィリアムズたちが船を引き帰させようとしたところ、入江は半魚人の作った防壁ですでに封鎖されていた。防壁を排除しようと潜水作業を行ったウィリアムズは半魚人に殺されるが、半魚人はマイアの放った銃弾に痛手を受け、入江の深くへ消えていく。

キャスト

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※括弧内は日本語吹替(テレビ版・初回放送1971年8月10日)

スタッフ

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日本語版

脚注

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  1. ^ a b 『ホラー・コレクション』、pp.207-209
  2. ^ a b c 『The horror movies』3、p.66
  3. ^ a b c ランディス『モンスター大図鑑』、p.188
  4. ^ ランディス『モンスター大図鑑』、p.190
  5. ^ ランディス『モンスター大図鑑』、p.303
  6. ^ 石田『図説モンスター』、p.45,106
  7. ^ ランディス『モンスター大図鑑』、p.62

参考文献

[編集]
  • 石田一『図説モンスター』(ふくろうの本, 河出書房新社, 2001年7月)
  • 楳図かずお監修『ホラー・コレクション』(富士見ドラゴンブック, 富士見書房, 1987年6月)
  • オフィス・ヴァリス編『The horror movies』3(近代映画社, 1986年5月)
  • ジョン・ランディス『モンスター大図鑑』(ネコ・パブリッシング, 2013年1月)

外部リンク

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