WASP-12b
WASP-12b は、惑星の通過を観測するスーパーWASPプロジェクトによってWASP-12の周囲を公転しているのが発見された太陽系外惑星であり、ホット・ジュピターである。2008年4月1日に発見が公表された[1]。主星から非常に近い軌道を公転しているため、主星から受け取るエネルギーによって、太陽系外惑星でも特に密度が低くなっているものの一つである。地球が太陽の周りを365日で公転するのと比べ、1日と少しで親星の周りを公転する。親星からの距離は地球と太陽の間の44分の1で、木星とほぼ同じ軌道離心率を持つ。
WASP-12b | ||
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木星との大きさの比較
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星座 | ぎょしゃ座 | |
分類 | 太陽系外惑星 巨大ガス惑星 | |
発見 | ||
発見日 | 2008年4月1日[1] | |
発見者 | Cameronら (スーパーWASPプロジェクト) | |
発見場所 | 南アフリカ天文台 | |
発見方法 | トランジット法 | |
軌道要素と性質 | ||
軌道の種類 | 周回軌道 | |
軌道長半径 (a) | 0.0229 ± 0.0008 au[2] | |
近点距離 (q) | 0.0218 au | |
遠点距離 (Q) | 0.0240 au | |
離心率 (e) | 0.049 ± 0.015[2] | |
公転周期 (P) | 1.091423 ± 0.000003 日[2] | |
軌道傾斜角 (i) | 83.1+1.4 −1.1°[2] | |
近点引数 (ω) | -74+13 −10°[2] | |
通過時刻 | 2454508.9761 ± 0.0002 BJD[2] | |
準振幅 (K) | 0.226 ± 0.004 km/s[2] | |
WASP-12の惑星 | ||
衛星の数 | 衛星が存在する可能性有り | |
位置 元期:J2000.0[3] | ||
赤経 (RA, α) | 06h 30m 32.79s[3] | |
赤緯 (Dec, δ) | +29° 40′ 20.3″[3] | |
距離 | 871 光年[1] (427 ± 90 パーセク[4]) | |
物理的性質 | ||
半径 | 1.736 ± 0.092 RJ[4] | |
質量 | 1.404 ± 0.099 MJ[4] | |
平均密度 | 0.337 ± 0.039 g/cm3[4] | |
表面重力 | 3.066 ± 0.031 (log g)[4] | |
表面温度 | 2,525 K[4] | |
年齢 | 17 ± 8 億年[5] | |
大気の性質 | ||
大気圧 | 不明 | |
一酸化チタン[5] | 割合不明 | |
酸化バナジウム[5] | 割合不明 | |
水[5] | 割合不明 | |
酸化ヨウ素[5] | 割合不明 | |
二酸化炭素[5] | 割合不明 | |
メタン[5] | 割合不明 | |
一酸化炭素[5] | 割合不明 | |
水素[5] | 割合不明 | |
シアン化水素[5] | 割合不明 | |
炭素[5] | 割合不明 | |
他のカタログでの名称 | ||
2MASS J06303279+2940202 b | ||
■Template (■ノート ■解説) ■Project |
2017年9月には、ハッブル宇宙望遠鏡を用いて観測を行った研究チームが、WASP-12bは恒星からの光の94%を吸収する、極めて低いアルベドを持つ天体であると発表した。それにより、メディアなどでは、WASP-12bは「アスファルトのように黒い惑星」と表現されている[6][7]。
特徴
編集WASP-12から非常に近い軌道にあるため、潮汐力によって惑星は卵形に引き延ばされ、1年に10-7木星質量(18京9000兆t)ずつ大気が主星にはぎ取られている[9]。主星に非常に近いことと、いわゆる潮汐加熱の効果により[要出典]、表面温度は 2500 K 以上になっている。
2010年5月20日、ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、WASP-12bが主星に「飲み込まれつつある」ことが判明した。それ以前にも、惑星が恒星に飲み込まれ得ることは指摘されていたが、はっきりとその現象が確認されたのはWASP-12bが初めてである。WASP-12bは、1000万年後には主星に吸収され完全に消滅するとみられる[10][11][12]。
また、ハッブル宇宙望遠鏡の宇宙起源分光器(COS)を使った、WASP-12bの大気の観測も行われた。この観測結果は、北京大学の李抒璘らによって、2009年2月にネイチャーで発表された。その結果、質量が木星よりも40%大きいにも関わらず、大気は木星半径の3倍にまで膨らんでいることが判明した。
2013年12月3日、ハッブル宇宙望遠鏡を使用した観測に基づき、大気の外層から水蒸気が検出されたという報告がなされた[13][14][15]。2014年7月には、WASP-12b、HD 209458 b、HD 189733 bの3つの太陽系外惑星が、従来考えられていたより大気が乾燥している(水蒸気が少ない)とする観測結果をNASAが発表した[16]。
炭素の含有量
編集最近の観測で、WASP-12bは炭素と酸素の含有量の比率を表したC/O比における炭素の割合から、炭素に富んだ巨大ガス惑星である事が示されている。その割合は、太陽の割合を有意に超えており、観測によるWASP-12bのC/O比の適合値はおよそ1で、これに対し、太陽は0.54である。C/O比は、炭素に富んだ惑星が、惑星系内に形成された可能性がある事を示唆している[17]。その観測を行った研究者の一人は「酸素よりも炭素が多いと、ダイヤモンドやグラファイトなどの純粋な炭素の岩石を含む」と発言している[18]。
また発表では、「WASP-12bのような炭素に富んだ巨大ガス惑星は他に観測されていないが、理論上では、炭素を主体とする固体惑星では、様々な組成が予測されている。例えば、地球サイズの場合、内部はダイヤモンドやグラファイトに占められ、地球のケイ酸塩組成とは対照的である。」と述べられた[17]。この発言を、メディアに引用され[19]、中には、WASP-12bを「ダイヤモンド惑星」と呼ぶものもある[20][21]。
衛星の可能性
編集惑星の光度曲線を研究しているロシアの天文学者は、WASP-12bの周りを、少なくとも1つの太陽系外衛星が公転している事を示す、規則的な光度の変化を捉えたと発表した[23]。
予想された衛星の特徴 | |
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軌道長半径(au) | 不明 |
質量(M⊕) | 0.57 - 6.4 |
画像
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WASP-12bの想像図。
-
WASP-12とWASP-12bの想像図。
関連項目
編集出典
編集- ^ a b c “WASP Planets”. SuperWASP. 2017年3月18日閲覧。
- ^ a b c d e f g Hebb; Collier-Cameron, A.; Loeillet, B.; Pollacco, D.; Hébrard, G.; Street, R. A.; Bouchy, F.; Stempels, H. C. et al. (2009). “WASP-12b: THE HOTTEST TRANSITING EXTRASOLAR PLANET YET DISCOVERED”. The Astrophysical Journal 693 (2): 1920–1928. arXiv:0812.3240. Bibcode: 2009ApJ...693.1920H. doi:10.1088/0004-637X/693/2/1920 .
- ^ a b c “WASP-12b -- Extra-solar Confirmed Planet”. SIMBAD. 2017年3月18日閲覧。
- ^ a b c d e f Chan, Tucker; Ingemyr, Mikael; Winn, Joshua N.; Holman, Matthew J.; Sanchis-Ojeda, Roberto; Esquerdo, Gil; Everett, Mark (2011). “THE TRANSIT LIGHT-CURVE PROJECT. XIV. CONFIRMATION OF ANOMALOUS RADII FOR THE EXOPLANETS TrES-4b, HAT-P-3b, AND WASP-12b”. The Astronomical Journal 141 (6): 179. arXiv:1103.3078. Bibcode: 2011AJ....141..179C. doi:10.1088/0004-6256/141/6/179. ISSN 0004-6256.
- ^ a b c d e f g h i j k “Planet WASP-12 b”. The Extrasolar Planet Encyclopaedia. 2017年3月19日閲覧。
- ^ Lazzaro, Sage (14 September 2017). “Hubble spots a 'pitch black' hot Jupiter planet that Eats light instead of reflecting it”. Daily Mail 2017年9月29日閲覧。
- ^ Wall, Mike (18 September 2017). “The hellish world WASP-12b is darker than fresh asphalt in visible light, but glows red-hot in infrared”. Scientific American 2017年9月29日閲覧。
- ^ “Hubble observes pitch black planet”. www.spacetelescope.org. 2017年9月29日閲覧。
- ^ Li, Shu-lin; Miller, N.; Lin, Douglas N. C. & Fortney, Jonathan J. (2010), “WASP-12b as a prolate, inflated and disrupting planet from tidal dissipation”, ネイチャー 463 (7284): 1054-1056, doi:10.1038/nature08715
- ^ 中日新聞 2010年5月23日付朝刊3面
- ^ Hubble Finds a Star Eating a Planet nasa.gov. 2010-05-20. Retrieved on 2017-03-19.
- ^ “太陽のような星に破壊される惑星”. AstroArts (2010年3月2日). 2017年3月19日閲覧。
- ^ Staff (3 December 2013). “Hubble Traces Subtle Signals of Water on Hazy Worlds”. NASA. 2017年3月19日閲覧。
- ^ Mandell, Avi M.; Haynes, Korey; Sinukoff, Evan; Madhusudhan, Nikku; Burrows, Adam; Deming, Drake (3 December 2013). “Exoplanet Transit Spectroscopy Using WFC3: WASP-12 b, WASP-17 b, and WASP-19 b”. Astrophysical Journal 779 (2): 128. arXiv:1310.2949. Bibcode: 2013ApJ...779..128M. doi:10.1088/0004-637X/779/2/128 2017年3月19日閲覧。.
- ^ “5つの惑星の大気に水の兆候”. AstroArts (2013年12月5日). 2017年3月19日閲覧。
- ^ Harrington, J.D. (July 24, 2014). “RELEASE 14-197 - Hubble Finds Three Surprisingly Dry Exoplanets”. NASA. 2017年3月19日閲覧。
- ^ a b Madhusudhan, N.; Harrington, J.; Stevenson, K. B.; Nymeyer, S.; Campo, C. J.; Wheatley, P. J.; Deming, D.; Blecic, J. et al. (2010). “A high C/O ratio and weak thermal inversion in the atmosphere of exoplanet WASP-12b”. Nature 469 (7328): 64–67. arXiv:1012.1603. Bibcode: 2011Natur.469...64M. doi:10.1038/nature09602. PMID 21150901.
- ^ “Carbon-Rich Planet: A Girl's Best Friend?”. U.S. News & World Report (10 December 2010). 2017年3月19日閲覧。
- ^ Lorianna De Giorgio (10 December 2010). “Carbon-rich planet could house diamonds”. Toronto Star. 2017年3月19日閲覧。
- ^ “Diamond planet found by Keele University astronomers”. BBC News Online. (9 December 2010)
- ^ “主星の光を9割以上取り込む黒い惑星”. AstroArts (2017年9月21日). 2017年9月29日閲覧。
- ^ Intagliata, Christopher (December 9, 2010). “Exoplanet Strikes Carbon Pay Dirt”. Scientific American
- ^ Российские астрономы впервые открыли луну возле экзопланеты (ロシア語) - "Studying of a curve of change of shine of WASP-12b has brought to the Russian astronomers unusual result: regular splashes were found out.<...> Though stains on a star surface also can cause similar changes of shine, observable splashes are very similar on duration, a profile and amplitude that testifies for benefit of exomoon existence."
外部リンク
編集ウィキメディア・コモンズには、WASP-12bに関するカテゴリがあります。