西ロマンス語
西ロマンス語(にしロマンスご、英: Western Romance languages)は、ラ・スペツィア=リミニ線を基準としたロマンス諸語の二大下位区分のひとつ。ガロ・ロマンス語、イベロ・ロマンス語、オクシタニー・カタロニア語(前二者のうちどちらかに含む考えもある)に大別される。ガロ・イタリア語を含む場合もある。複数形での「s」の使用、イタリア語やルーマニア語の /t͡ʃ/ と比較して、/t͡s/(しばしば /s/)の「軟らかいC」音を持つ点が特徴とされる。
西ロマンス語 | |
---|---|
話される地域 | フランス、イベリア半島、北イタリア、スイス |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 |
原型 | |
下位言語 |
|
Glottolog | west2813[2] |
ロマンス語の分類 |
相互理解可能性に基づいて、ダルビー(Dalby)はポルトガル語、スペイン語、アストゥリアス語、アラゴン語、カタルーニャ語、ガスコーニュ語、プロヴァンス語、ガロ=ワロン語、フランス語、アルピタン語、ロマンシュ語、ラディン語、フリウリ語の13言語に分類している[3]。
イタロ・ダルマチア語と共にイタロ・西ロマンス語として分類されることもある。イタロ・ダルマチア語を東ロマンス語に含む分類法もある。
サルデーニャ語は東西ロマンス語どちらにも属さず、両者より早い段階で分岐した。
今日、話者数を基準にした四大標準化西ロマンス語はスペイン語(母語話者が約4.86億人、第二言語話者が約1.25億人)、ポルトガル語(母語話者が約2.2億人、第二言語話者が約4500万人、多くがアフリカに居住)、フランス語(母語話者が8000万人、第二言語話者が約7000万人、多くがアフリカのフランス語圏に居住)、カタルーニャ語(母語話者が720万人)である。これらの多くは膨大な数の非母語話者を持つ。特にフランス語は西アフリカでリングワ・フランカとして広く使われている。
ガロ・ロマンス語
編集ガロ・ロマンス語には以下の言語が含まれる。
- オイル語。標準フランス語、ピカルディ語、ワロン語、ロレーヌ語、ノルマン語が含まれる[4]。
- アルピタン語あるいはフランコ=プロヴァンス語。フランス語とプロヴァンス語の特徴を併せ持つ。
- オック語にはプロヴァンス語やガスコーニュ語が含まれる[5]。オクシタニー・カタロニア語に含まれることもある。
また、以下の言語が含まれることもある。
- カタルーニャ語は中央カタルーニャ語およびバレンシア語の二大標準語が存在する。オクシタニー・カタロニア語または東イベロ・ロマンス語に含まれることもある。
- レト・ロマンス語。スイスのロマンシュ語、ドロミーティ地方のラディン語、フリウリのフリウリ語が含まれる。レト・ロマンス語をガロ・ロマンス語に含む考えと、西ロマンス語の独立した系統と見なす考えがある。
- ガロ・イタリア語。ピエモンテ語、リグーリア語、ロンバルド語、エミリア語、シチリア・ロンバルド語、バジリカータ・ロンバルド語が含まれる。
オイル語、アルピタン語、レト・ロマンス語ははガロ・レト語としてまとめられることもあるが、複数の言語学者によってレト・ロマンス語と同じグループに属するとされるガロ・イタリア語をここから除外するのは困難である[6]。
イベロ・ロマンス語
編集イベリア半島のイベロ・ロマンス語には以下の言語が含まれる[7]。
- 西イベロ・ロマンス語
- カスティーリャ諸語: スペイン語とラディーノ語が含まれる。
- ガリシア・ポルトガル語: ポルトガル語、ガリシア語、ファラ語が含まれる。
- アストゥリアス・レオン語: 東から西にカンタブリア語、アストゥリアス語、レオン語が、北から南にレオン語、ミランダ語、エストレマドゥーラ語が分布する。
- 絶滅したモサラベ語。西イベロ・ロマンス語に含まれることもある。
- カタルーニャ語とアラゴン語からなる東イベリア・ロマンス語。オクシタニー・カタロニア語に含まれることもある。
オクシタニー・カタロニア語
編集前二者に含まれることもあるが、ガロ・ロマンス語、イベロ・ロマンス語どちらの特徴も持ち合わせていない。以下の言語が含まれる。
脚注
編集- ^ a b Rebecca Posner, The Romance Languages (series: Cambridge Language Surveys), Cambridge University Press, 1996 (3rd printing 2004), p. 197
- ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Western Romance”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History
- ^ David Dalby, 1999/2000, The Linguasphere register of the world’s languages and speech communities. Observatoire Linguistique, Linguasphere Press. Volume 2. Oxford.[1]
- ^ Maiden, Martin; Smith, John Charles; Ledgeway, Adam (2011) (英語). The Cambridge History of the Romance Languages. Cambridge University Press. pp. 167. ISBN 9780521800723
- ^ Maiden, Martin; Smith, John Charles; Ledgeway, Adam (2013-10-24) (英語). The Cambridge History of the Romance Languages: Volume 2, Contexts. Cambridge University Press. pp. 173. ISBN 9781316025550
- ^ Hull, Geoffrey, The Linguistic Unity of Northern Italy and Rhaetia: Historical Grammar of the Padanian Language, Sydney: Beta Crucis, 2017. 2 vols.
- ^ Nordhoff, Sebastian; Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin, eds. (2013). "Western Romance". Glottolog. Leipzig: Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology.
- ^ Maiden, Martin; Smith, John Charles; Ledgeway, Adam (2013-10-24) (英語). The Cambridge History of the Romance Languages: Volume 2, Contexts. Cambridge University Press. pp. 173. ISBN 9781316025550
- ^ Tomas Arias, Javier (2016). Elementos de lingüística contrastiva en aragonés. Estudio de algunas afinidades con gascón, catalán y otros romances. Barcelona: Universitat de Barcelona