田中浩 (政治学者)
田中 浩(たなか ひろし、1926年10月23日[1]- )は、日本の政治学者[2]。一橋大学名誉教授。学位は、法学博士(名古屋大学)。専攻はヨーロッパ政治思想史[2]。トマス・ホッブズ、カール・シュミット、長谷川如是閑の思想史的研究を柱として、現代政治史や福祉国家論などにも業績を持つ。
来歴
編集佐賀県生まれ。旧制佐賀中学校、陸軍経理学校予科、旧制佐賀高等学校文科乙類を経て、東京文理科大学哲学科卒業。
東京教育大学文学部助手、助教授を経て教授となる。同大学の閉学以降、静岡大学人文学部教授を経て、1983年から90年まで一橋大学社会学部教授。定年退官後、大東文化大学法学部教授、立命館大学客員教授、聖学院大学大学院客員教授を歴任し、聖学院大学大学院アメリカ・ヨーロッパ文化学研究科教授に着任する。大東文化大学在職時には、同大学を経営する学校法人大東文化学園の理事(学識経験者)、法学部長、法学部に附置された国際比較政治研究所所長を務めた。
一橋大学社会学部教授に着任する際、水田洋が『史学雑誌』第92編3号(1983年3月)に田中の研究を批判する書評「田中 浩著『ホッブズ研究序説――近代国家論の生誕――』」を掲載し、関係者のあいだで物議を醸した。この書評は、田中の一橋大学への着任を妨害しようとする意図をもつ「怪文書」として受け取られた一方[要出典]、書評それ自体は的確で一定の説得力を備えているとも評され、田中の研究や研究姿勢の欠点を鋭く衝くものともされた。[独自研究?]この書評は翌年、水田の著書『人のこと 本のこと』(ミネルヴァ書房、1984年9月)にも収録されたが、初出時の末尾に附された「追記」(「この書評は、昨年九月に編集部に送られた。掲載がおくれている間に、著者に関する人事問題が、完了した。」)は削除された。
1986年、「長谷川如是閑と政教社の人びと―日本におけるリベラリズムの一潮流」で朝日学術奨励金を受ける。
著書
編集単著
編集- 『ホッブズ研究序説―近代国家論の生誕』(御茶の水書房, 1982年 / 改訂増補版, 1994年)
- 『長谷川如是閑研究序説』(未來社, 1989年)
- 『国家と個人―市民革命から現代まで』(岩波書店, 1990年 / 新版, 2008年)
- 『カール・シュミット―魔性の政治学』(未來社, 1992年)
- 『近代日本と自由主義』(岩波書店, 1993年)
- 『戦後50年史』(学陽書房, 1994年)
- 『近代政治思想史―思想と歴史のダイナミズム』(講談社学術文庫 1995年)
- 『戦後日本政治史』(講談社学術文庫 1996年)
- 『ホッブズ』(研究社出版, 1998年)
- 『戦後世界政治史』(講談社[講談社学術文庫], 1999年)
- 『日本リベラリズムの系譜―福沢諭吉・長谷川如是閑・丸山真男』(朝日新聞社, 2000年)
- 『20世紀という時代―平和と協調への道』(日本放送出版協会[NHKライブラリー], 2000年)
- 『「第三の開国」は可能か』(日本放送出版協会[NHKライブラリー], 2003年)
- 『ヨーロッパ知の巨人たち――古代ギリシアから現代まで』(日本放送出版協会[NHKライブラリー], 2004年)
- 『思想学事始め―戦後社会科学形成史への一断面』(未來社, 2006年)
- 『Century books 人と思想 ホッブズ』(清水書院 ,2006年)
- 『田中浩集』全10巻(未來社)
- 第1-2巻 トマス・ホッブズ(2012年)
- 第3巻 カール・シュミット(2014年)
- 第4巻 長谷川如是閑(2014年)
- 第5巻 国家と個人(2013年)
- 第6巻 日本リベラリズムの系譜(2013年)
- 第7巻 ヨーロッパ・近代日本 知の巨人たち(2013年)
- 第8巻 現代日本政治(2015年)
- 第9巻 現代世界政治(2014年)
- 第10巻 思想学事始め(2015年)
- 『ホッブズ―リヴァイアサンの哲学者』(岩波新書, 2016年)
共著
編集- 『政治学への接近』(安世舟 学陽書房, 1978年)
編著
編集- 『近代日本におけるジャーナリズムの政治的機能』(御茶の水書房, 1982年)
- 『トマス・ホッブズ研究』(御茶の水書房, 1984年)
- 『近代日本のジャーナリスト』(御茶の水書房, 1987年)
- 『現代世界と国民国家の将来』(御茶の水書房, 1990年)
- 『現代思想とは何か―近・現代350年を検証する』(龍星出版, 1996年)
- 『現代世界と福祉国家―国際比較研究』(御茶の水書房, 1997年)
- 『現代世界-その思想と歴史 1 思想学の現在と未来』(未來社, 2009年)
- 『現代世界-その思想と歴史 2 ナショナリズムとデモクラシー』(未來社, 2010年)
- 『現代世界-その思想と歴史 3 EUを考える』(未來社, 2011年)
- 『現代世界-その思想と歴史 4 リベラル・デモクラシーとソーシャル・デモクラシー』(未来社, 2012年)
共編著
編集- 『国家思想史(上・下)』(田口富久治共著, 青木書店, 1974年)
- 『社会契約説―近代民主主義思想の源流』(飯坂良明・藤原保信共著, 新評論, 1977年)
- 『日本の国家思想』(小松茂夫共著, 青木書店, 1980年)
- 『社会変動と法―法学と歴史学の接点』(磯野誠一共著, 勁草書房, 1981年)
- 『現代民主主義の諸問題―秋永肇教授古稀記念論集』(田口富久治共著, 御茶の水書房, 1982年)
- 『近代文明批判―「国家」の批判から「社会」の批判へ』(和田守共著, 社会評論社, 1990年)
- 『21世紀の民族と国家(1) 民族と国家の国際比較研究』(和田守共著, 未來社, 1997年)
訳書
編集- ロドニー・ヒルトン、H・フェイガン『イギリス農民戦争―1381年の農民一揆』(武居良明と共訳, 未來社, 1961年)
- トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』、水田洋と共編訳(抄訳)「世界の大思想」(河出書房新社、1966年)
- カール・シュミット『政治的なものの概念』(原田武雄と共訳, 未來社, 1970年)
- カール・シュミット『政治神学』(原田武雄と共訳, 未來社, 1971年)
- カール・シュミット『大統領の独裁』(原田武雄と共訳, 未來社, 1974年)
- カール・シュミット『合法性と正当性』(原田武雄と共訳, 未來社, 1983年)
- ミルトン・マイヤー『彼らは自由だと思っていた―元ナチ党員10人の思想と行動』(金井和子と共訳, 未來社, 1983年)
- エリック・ウィリアムズ『帝国主義と知識人―イギリスの歴史家たちと西インド諸島』(岩波書店, 1986年)
- C・A・リーズ『事典政治の世界―理論・思想・制度・国際』(安世舟と共訳編, 御茶の水書房, 1987年)
- アーネスト・バーカー『近代自然法をめぐる二つの概念―社会・政治理論におけるイギリス型とドイツ型』(津田晨吾・新井明と共訳, 御茶の水書房, 1988年)
- J・W・N・ワトキンス『ホッブズ―その思想体系』(高野清弘と共訳, 未來社, 1988年)
- P・E・トルドー『連邦主義の思想と構造―トルドーとカナダの民主主義』(加藤普章と共訳, 御茶の水書房, 1991年)
- カール・シュミット『独裁―近代主権論の起源からプロレタリア階級闘争まで』(原田武雄と共訳, 未來社, 1991年)
- ヴォルフガング・J・モムゼン『マックス・ヴェーバーとドイツ政治1890~1920』(安世舟と共訳, 2巻, 未來社, 1993年-1994年)
- リチャード・タック『トマス・ホッブズ』(重森臣広と共訳, 未來社, 1995年)
- エンマリヒ・タロシュ, ヴォルフガング・ノイゲバウァー編『オーストリア・ファシズム―1934年から1938年までの支配体制』(村松惠二と共訳, 未來社, 1996年)
- クリストファー・ピアソン『曲がり角にきた福祉国家―福祉の新政治経済学』(神谷直樹と共訳, 未來社, 1996年)
- トマス・ホッブズ『哲学者と法学徒との対話―イングランドのコモン・ローをめぐる』(重森臣広・新井明と共訳, 岩波書店[岩波文庫], 2002年)
- マーク・フィルプ『トマス・ペイン―国際派革命知識人の生涯』(梅田百合香共訳, 未來社, 2007年)
- ルネ・クーペルス,ヨハネス・カンデル編『EU時代の到来 ヨーロッパ・福祉社会・社会民主主義』(柴田寿子共監訳, 未來社 2009年)
- トマス・ヒル・グリーン『イギリス革命講義 クロムウェルの共和国』(佐野正子共訳, 未來社, 2011年)
- トマス・ホッブズ『法の原理―人間の本性と政治体 』(重森臣広・新井明と共訳, 岩波書店[岩波文庫], 2016年)