スジ肉
スジ肉(すじにく)とは、食肉のアキレス腱の部分、または腱が付いた肉のことである。また横隔膜の一部も肉質が近似していることから、スジ肉として扱われている。
牛スジ肉
編集流通しているスジ肉の大多数は肉牛のもので、牛のアキレス腱は特に「牛スジ」とよばれている。
主な種類
編集- アキレス腱(腱)
- スジ(筋)
- 肉を各部位に切り分ける時、下処理で肉に付いている余分な筋を取り除いて集めたもの。細切れになっているものが多く、肉とされる部分も多く付いているが、処理されていない脂身も多く付いている。
- メンブレン(膜)
- ハラミの外側についている膜状の部分を剥がしたもの。白い板状になっており、処理時に脂身を付けたままにしたものもある。コンビニエンスストアなどで販売されているおでんに使われることが多い。また、食品の原材料名に「ハラミ」と記入されることもある。
牛スジがホルモンと混同される扱いを受けることもあるが、これは2. に内臓肉の部位も混入していることや、3.が内臓肉そのものとして扱われていることによるもので、厳密にはスジ肉はホルモンと異なる部位である。例えば関西における「どて焼き」はスジ肉が使われる料理であるが、中部地方ではスジ肉を使うもの、豚の内臓を使うもの、双方を「どて」「どて煮」と称する。
スジ肉は地方によっては店頭に出回ることが少ないため、生肉の状態で入手するためには、あらかじめ精肉店に予約や注文を入れておく方法があるが、2.や3.はボイルなどの下処理を行いパック詰めにされたものが、大規模スーパーなどで販売されていることもある。九州では、生の状態で常時スーパーの精肉売り場に並んでいる。
調理方法
編集スジ肉は、長時間煮込む事により柔らかくなり、調理中に換気が必要なほどの臭みも消え、ダシが出るため、「おでん」の具として広く用いられてきた。東日本の一般家庭で調理に用いられることは少ないが、西日本においては牛スジを他の料理の食材として用い始めたことから発展し、様々な料理に用いられている。西日本では主に牛スジ肉とこんにゃくを煮込み砂糖・醤油で甘辛く味付けして利用しており、これを特にすじこん・ぼっかけ(神戸市長田付近)・ころ(播磨付近)等と呼び、そのままないしはお好み焼き・ねぎ焼き・焼きそば・うどん・ラジオ焼き(たこ焼きの原型であり、たこの代わりに味付けした牛スジ肉を入れたもの)・カレーなどの具材になっている。
家庭で煮込む場合は、圧力鍋を用いると大幅に時間が短縮できて便利である。用いる部位によっては、かなり脂の強い食材であるため、煮汁の上に浮いてくる脂肪分を丁寧に取り除くことが必要となるが、一晩冷やせば脂肪が固まるので簡単に取ることができる。大量に煮て小分けにしたものを冷凍しておけば便利である。
また、スジ肉およびその煮汁は多量のゼラチン質が含まれており、味をつけて煮た野菜などと一緒に冷やすと固まり、ゼリー寄せ、あるいは煮こごりができる。ゼラチン質はコラーゲンの塊のようなものであることから、美容を意識して食べる事も勧められるが、その場合は前述した脂について留意したほうが良い。
利用
編集牛スジは、関西や九州の居酒屋やおでん屋で供されていることが多かったが、コンビニエンスストアがおでんの種として用いたことにより、全国規模で普及するようになった。
過去には廃棄部分として扱われることもあったが、2000年代以降は一般的に認知されてきたことから需要が増えており、売価については他の部位と変わらないことが多い。
鹿スジ肉
編集鹿のスジ肉は煮込み料理などに利用されている[2]。なお、シカのアキレス腱を干したものは、古来、漢方薬では鹿筋と称して、寒湿の治療に利用された[3]。
脚注
編集- ^ マガジンハウス『SUJI MADNESS―男の料理 すじ肉』 ISBN 4838707312
- ^ “トピックス3 消費が広がるジビエ”. 農林水産省. 2020年3月4日閲覧。
- ^ 城間恒宏, 沖縄県教育庁文化財課史料編集班「琉球におけるシカの利用と移入の目的について(補遺)」『沖縄史料編集紀要』第36号、沖縄県教育委員会、2013年、61-74頁、ISSN 0914-4137。