流刑地にて
『流刑地にて』(るけいちにて、In der Strafkolonie)は、フランツ・カフカの短編小説。1914年10月執筆。カフカは当時長編『審判』を書き進めていたが、行き詰ったため中断しこの短編が書き上げられた。その後1919年にクルト・ヴォルフ社より60ページほどの書籍として刊行されている。
流刑地にて In der Strafkolonie | |
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初版本の表紙 | |
作者 | フランツ・カフカ |
国 | ドイツ国 |
言語 | ドイツ語 |
ジャンル | 短編小説 |
刊本情報 | |
出版元 | クルト・ヴォルフ社 |
出版年月日 | 1919年10月 |
日本語訳 | |
訳者 | 本野亨一 |
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あらすじ
編集とある学術調査の旅行家が流刑地での処刑の立会いに招かれた。この地では処刑のために特別な拷問機械を用意しており、旅行家は処刑される予定の囚人の傍で、熱心な将校からその機械の説明を聞く。その機械は2つの棺を組み合わせたような形をしている。実際に使用するには、まず下のほうの《ベッド》と呼ばれる部分に囚人を腹ばいに固定する。そして上部の《製図屋》の中で組み合わされた歯車によって、《製図屋》の下に付けられた《馬鍬》と呼ばれる鋼鉄製の針が動き、囚人の体にその罪に沿った判決文を時間をかけて刻む。処刑には12時間もの時間がかかり、最後には囚人は死体となって片付けられる。
この機械は前任の司令官によって作られたものであり、将校には特別な思い入れがある。そして現在、この機械による処刑は批判にさらされ、現在の司令官のもとで存続の危機にあるという。将校は機械の説明をしながら、この機械の存続のためにひと肌脱いでくれないかと旅行家に頼む。しかし処刑機械の非人間性を感じていた旅行家は、その頼みをきっぱりと断る。すると将校は突然思い至って、縛り付けられていた囚人を放免する。そして《製図屋》の中身を新たに入れ替え、自分が裸になってその機械に横たわって機械を作動させる。しかし機械は鈍い音を立てて壊れ始め、《製図屋》からは歯車が次々と飛び出し、《馬鍬》はわずかな時間の間に将校を串刺しにして殺してしまう。
翻案・影響
編集- フランク・ザッパはアルバム『We're Only in It for the Money』(1968年)のライナーノートにおいて、収録曲「The Chrome Plated Megaphone of Destiny」を聴く前にこの作品を読むことを薦めている。
- イアン・カーティスはこの作品からインスピレーションを受けて「コロニー」(『クローサー』収録、1980年)を作曲した。
- フィリップ・グラスはこの作品に基づいて2000年に室内オペラ『流刑地にて』を作曲している。
- 村上春樹は長編小説『海辺のカフカ』において、主人公の少年に「その複雑で目的のしれない処刑機械は、現実の僕のまわりに実際に存在したのだ。それは比喩とか寓話とかじゃない」[1]と言わせている。
日本語訳
編集収録されている書籍名を記す。
脚注
編集外部リンク
編集- 「流刑地にて」原文(Zeno.org)
- 『流刑地で』:新字新仮名 - 青空文庫(原田義人訳)