真獣下綱(しんじゅうかこう、学名:Eutheria)あるいは真獣類正獣類正獣下綱、は、獣類に属する哺乳類の一群である。有胎盤類の他、ジュラマイアなどいくらかの絶滅分類群を含む。

真獣類
Eutheria
有胎盤類の真獣類であるLeptictidaの化石(古第三紀北アメリカ産)
地質時代
前期白亜紀 - 完新世現代
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
下綱 : 真獣下綱 Eutheria
学名
Eutheria
Huxley1880
和名
真獣類
上目

概要

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有袋類と絶滅した近縁種を含んだ後獣下綱とは姉妹群である。

哺乳類の現生種はおよそ4300だが、うち約4000が真獣下綱である。また生物地理的な分布においては、オーストラリア区に限られる原獣亜綱カモノハシ目 / 単孔類)やオーストラリア区及び新北区新熱帯区のみとなる後獣下綱(有袋類)などとは異なり、ほぼ全世界に分布している。[2]

形態

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有袋類との相違点を以下に述べる。

脳函
有袋類と比しても拡大が著しい[3]
有袋類が基本的に50本の歯を持つのに対し、真獣下綱では44本となる。またともにトリボスフェニック(tribosphenic)型後臼歯を持つが、その形態は異なる。この大臼歯の数も、有袋類は4本であるが、真獣類では3本となる。[4]
骨格
有袋類にある前恥骨(袋骨)を持たない[5][3]。ただし、初期群には持つものもいる。
胎生
真獣下綱、後獣下綱はともに胎生であるが、真獣下綱は胎盤が形成される点が異なる。また、有袋類は及び子宮が一対であるのに対し、真獣下綱では膣は一つ、子宮はネズミ目ウサギ目を除いては一つに癒合している。[6]

分類

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上位分類

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現生哺乳類の多数は有胎盤である。その他に、別の絶滅哺乳類の系統である単孔類と有袋類の2つが生き残る。真獣類を他と区別する点は妊娠中に胎児胎盤を通して成長させることにある(有袋類であるフクロアナグマは例外的に胎盤を有する)。有性生殖をし、仔は充分に成長するまで母親に懐胎されている。近縁の後獣下綱と同じく胎生である。全ての大陸と全ての大洋にみられる。

[7]

有胎盤類

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100万年前
真獣類
の起源
Murtoilestes
Prokennalestes
Ukhaatherium
Asioryctes
Daulestes
Aspanestes
Eoungulatum
Gypsonictops

白亜紀の真獣類と有胎盤類[8] ┏━ 有胎盤類以外の真獣類
┏━ 有胎盤類
● アジアの化石
○ 北米の化石

分子時計による有胎盤類が放散した時期

真獣類が1880年トマス・ヘンリー・ハクスリーによって導入されたとき、その語はそれまで使われていた有胎盤類 (Placentalia) よりも範囲が広くされ、冠系統としての有胎盤類と有袋類よりも有胎盤類に近い絶滅種群が含まれる。

現在、有胎盤類は、有袋類・単孔類を除く現生哺乳類の最も新しい共通祖先とその子孫と定義される[9][10]。これは一般に、真獣類より狭いクレードであり、真獣類と後獣類が分岐してから、有胎盤類が放散する以前に、有胎盤類に繋がる系統から分岐した原始的な真獣類が含まれない。 Maureen A O’Learyらによる研究では、有胎盤類の共通祖先は中生代新生代の境目、いわゆるK-T境界の後に現れたとしている。[11]

下位分類

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知られている最古の真獣下綱に属する種が中国白亜紀下層から出土したエオマイア・スカンソリアである。これは紛れも無い真獣類であったが、その臀部は充分に成長した仔を産むのには狭すぎる。このことから、初期の真獣類では、胎児の成長に胎盤の果たす役割は些細なものであったと結論付けられる。

その他にも有胎盤類ではない複数の絶滅分類群が報告されている。

また、現生群は全て有胎盤類であり、異節上目アフリカ獣上目真主齧上目ローラシア獣上目という四つの大グループに分類される。このうち真主齧上目とローラシア獣上目は近縁で、北方真獣類(ボレオユーテリア)を形成する[12]。これと残り二つのグループの分岐順には様々な説が存在した。遺伝子を解析した結果においても、使用する遺伝子によって結果が異なったからである。

しかしLINE配列の解析を行っていた東工大大学院の岡田典弘教授らのグループは祖先多型[注 1]が存在し、その状態が解消される前に3つの系統がほぼ同時期に、急激に分岐したと結論付けた[13][14]

これらの3系統は、ミトコンドリアDNAと地理などの分析により1億2000万年から1億500万年前に分岐したとされる[15][16]

[17][7]

過去の分類

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かつては体型などから真獣下綱を化石種も含めて4つの「区」に分けていた。(†は目単位で化石種)

[18][19]

有爪区は原始食虫類から直接分離したと考えられたもので、山鼠区はネズミとウサギの仲間を束ねたもの、体形が他の哺乳類と大きく異なるクジラは独立の区に入れられ、当時単系統と考えられてた有蹄類全般と体型的に近い食肉目は一つの区に束ねられていた[18]


注釈

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  1. ^ 祖先に異なるSINE配列を持った複数のグループが存在した事。通常はこの状態は長続きせず、いずれ一つの配列パターンに落ち着く。

出典

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  1. ^ Rook, Deborah L.; Hunter, John P. (April 2013). “Rooting Around the Eutherian Family Tree: the Origin and Relations of the Taeniodonta”. Journal of Mammalian Evolution 21: 75–91. doi:10.1007/s10914-013-9230-9. 
  2. ^ 『哺乳類の進化』 48–49頁
  3. ^ a b 『哺乳類の進化』 50頁
  4. ^ 『絶滅哺乳類図鑑』 12頁
  5. ^ 『絶滅哺乳類図鑑』 41頁
  6. ^ 『「退化」の進化学』 75 - 76頁
  7. ^ a b 哺乳類の系統分類(渡邊誠一郎)
  8. ^ Ji, Q., Luo, Z-X., Yuan, C-X.,Wible, J.R., Zhang, J-P. and Georgi, J.A. (April 2002). “The earliest known eutherian mammal”. Nature 416 (6883): 816–822. doi:10.1038/416816a. PMID 11976675. https://www.nature.com/articles/416816a 2008年9月24日閲覧。. 
  9. ^ Archibald, J David (2001), “Eutheria (Placental Mammals)”, Encyclopedia of Life Science, http://www.bio.sdsu.edu/faculty/archibald/Archibald01Eutheria.pdf 
  10. ^ Carter, A.M.; Mess, A. (2007), “Evolution of the Placenta in Eutherian Mammals”, Placenta 28 (4): 259–62, http://www.anslab.iastate.edu/Class/AnS536w/03%20Placental%20Physiology/Carter2006.pdf 
  11. ^ http://www.sciencemag.org/content/339/6120/662
  12. ^ レトロポゾンが書き込んだ哺乳類の歴史(2006.05.23)
  13. ^ 産経ニュース 【科学】哺乳類の進化 大陸分裂→3系統に分岐
  14. ^ 『ありえない!? 生物進化論』 82–86頁
  15. ^ Springer, Mark S.; Murphy, William J.; Eizirik, Eduardo; O’Brien, Stephen J. (2003). “Placental mammal diversification and the Cretaceous–Tertiary boundary”. Proceedings of the National Academy of Sciences 100 (3): 1056–1061. doi:10.1073/pnas.0334222100. PMC 298725. PMID 12552136. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC298725/. 
  16. ^ Nishihara, H.; Maruyama, S.; Okada, N. (2009). “Retroposon analysis and recent geological data suggest near-simultaneous divergence of the three superorders of mammals”. Proceedings of the National Academy of Sciences 106 (13): 5235–5240. doi:10.1073/pnas.0809297106. 
  17. ^ Eutheria phylogeny”. Mikko’s Phylogeny Archive. 2006年3月8日閲覧。
  18. ^ a b 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、1968年、p.395-400。
  19. ^ 『標準原色図鑑全集20 動物II』、林壽郎、株式会社保育社、1968年、p.XI。(ただしこちらは化石種は未記載)

参考文献

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関連項目

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