元山連絡所
元山連絡所(ウォンサンれんらくじょ)は、朝鮮民主主義人民共和国江原道高城郡に所在する情報機関で、朝鮮労働党作戦部(現、朝鮮人民軍偵察総局)に所属する工作員侵入基地[1]。別名、313連絡所(313れんらくじょ)、第632軍部隊(だい632ぐんぶたい)[1]。4か所ある海上連絡所のうちの1つ[1]。高速スパイ船を配置している[2]。
概要
編集元山連絡所は、清津連絡所(咸鏡北道清津市)・南浦連絡所(南浦特別市)・海州連絡所(黄海南道海州市)とならぶ海上処の連絡所のうちの1つで、日本海を通じて韓国東海岸地方、釜山周辺、西日本一帯への侵入を担当している[1]。南浦連絡所とともに「商船連絡所」とも呼ばれ、所員は貿易船の船員に偽装して韓国や海外に出かけ、海賊行為や麻薬・武器などの密貿易も行う[3]。1985年の水難民支援で韓国に来航した「オウン青年号」は、元山連絡所から貿易船に偽装されて送られた船舶である[3]。
1989年、元山の連絡所は一度完全に解体されたものの1991年、江原道高城郡にひそかに再建されている[1]。ユーゴ型潜水艇が10隻以上配備されている[1][注釈 1]。
日本人拉致被害者のうち、久米裕 (1977年9月19日失踪)、地村保志・浜本富貴恵(1978年7月7日失踪)、蓮池薫・奥土祐木子(1978年7月31日失踪)は工作船で元山連絡所または清津連絡所へ運ばれ、北朝鮮に入国させられたものと考えられる[4]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d e f g 清水(2004)pp.46
- ^ 全(2002)p.216
- ^ a b “天安艦沈没事件は北朝鮮の犯行”. コリア国際研究所 (2010年5月23日). 2021年11月4日閲覧。
- ^ 高世(2002)p.139
参考資料
編集- 清水惇『北朝鮮情報機関の全貌―独裁政権を支える巨大組織の実態』光人社、2004年5月。ISBN 4-76-981196-9。
- 全富億『北朝鮮のスパイ戦略』講談社〈講談社プラスアルファ文庫〉、2002年10月(原著1999年)。ISBN 4-06-256679-6。
- 高世仁『拉致 北朝鮮の国家犯罪』講談社〈講談社文庫〉、2002年9月(原著1999年)。ISBN 4-06-273552-0。