三陽商会
株式会社三陽商会(さんようしょうかい)は、東京都新宿区に本社を置くアパレルメーカーである。販売網は百貨店が主体であり、自社ブランドに加え、海外の様々なブランドともライセンス契約を結び販売している。
三陽商会本社 | |
種類 | 株式会社 |
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機関設計 | 監査役会設置会社[1] |
市場情報 | |
本社所在地 |
日本 〒160-0003 東京都新宿区四谷本塩町6番14号 北緯35度41分24.1秒 東経139度43分49.1秒 / 北緯35.690028度 東経139.730306度座標: 北緯35度41分24.1秒 東経139度43分49.1秒 / 北緯35.690028度 東経139.730306度 |
設立 | 1943年5月11日 |
業種 | 繊維製品 |
法人番号 | 1010401075845 |
代表者 | 大江伸治(代表取締役社長) |
資本金 |
150億200万円 (2020年2月29日現在) |
発行済株式総数 |
1億2,622万9,345株 (2020年2月29日現在) |
売上高 |
連結:688億68百万円 単体:668億77百万円 (2020年2月期) |
営業利益 |
連結:△28億75百万円 単体:△28億38百万円 (2020年2月期) |
経常利益 |
連結:△28億99百万円 単体:△27億71百万円 (2020年2月期) |
純利益 |
連結:△26億85百万円 単体:△24億81百万円 (2020年2月期) |
純資産 |
連結:388億22百万円 単体:382億81百万円 (2020年2月29日現在) |
総資産 |
連結:623億86百万円 単体:615億58百万円 (2020年2月29日現在) |
従業員数 |
連結:1,650名 単体:1,552名 (2020年2月29日現在) |
決算期 | 12月末日 |
会計監査人 | 有限責任あずさ監査法人 |
主要株主 |
RMB JAPAN OPPORTUNITIES FUND, LP. 6.32% 日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(三井住友信託銀行・三井物産) 6.32% 八木通商 5.24% 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 4.27% SSBTC CLIENT OMNIBUS ACCOUNT 3.94% 日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口9) 3.84% 日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口9) 3.65% 三越伊勢丹 3.44% STATE STREET BANK AND TRUST CLIENT OMNIBUS ACCOUNT 3.26% 三菱UFJ銀行 2.98% (2020年2月29日現在) |
主要子会社 |
サンヨーアパレル株式会社 上海三陽時装商貿有限公司 ルビー・グループ株式会社 |
関係する人物 | 吉原信之(創業者) |
外部リンク | https://www.sanyo-shokai.co.jp/ |
概要
編集創業者の吉原信之が、戦時下の1943年(昭和18年)に電気関係各種工業用品及び繊維製品の製造販売を目的として、東京都板橋区にて工作機械工具の修理加工、販売をおこなうべく同社を設立する[2]。社名の由来は「三井」「三菱」など有力財閥の「三」と、創業者である吉原の父、「陽」に因んでつけられた。
終戦直後の1945年(昭和20年)8月、板橋にあった本社工場を売却し、銀座に本社を移転。戦時中に使用された暗幕を元にレインコートの製造販売を開始する[3]。 その後1949年(昭和24年)に第一通商(現在の三井物産)が企画した「全国エキスポートバザー」向けにレインコートの縫製を大量に受注したことで、レインコート製造販売の大手として、頭角を現す。1951年(昭和26年)には自社のレインコートを「サンヨーレインコート」として、商標登録をおこなう。これと時期を同じくして、全国各百貨店への営業も開始し、1953年(昭和28年)には銀座松屋が企画したコンクールで最優秀製品に選ばれた「ダスターコート」、その後1959年(昭和34年)には、当時映画館で上映されて話題を呼んでいたフランス映画「三月生まれ」で女優・ジャクリーヌ・ササールが着ていたコートを日本人向けにアレンジしたものを「ササールコート」と命名して売り出し、これがヒットしたことで、レインコートの製造販売から総合アパレルメーカーへと成長を遂げることになる。
1965年(昭和40年)からは、英・バーバリー社製のコートの販売をおこなうようになると共に、1969年(昭和44年)以降はバーバリー他海外のコートメーカーとの技術提携により、各メーカーの製品の国内ライセンス生産へと移行する[3]。またこれと共に、各世代をターゲットにしたファッションブランドの開発も積極的におこない、現在も女性向けブランド「EPOCA」や「FRAGILE」に代表される多数のファッションブランドを展開してきた[4][5][6]。
大きな転機となったのは、2015年(平成27年)6月30日付でのバーバリー社とのライセンス契約の終了である[7]。これにより日本におけるバーバリーの販売は英国本社が日本法人を通じて直営展開することとなった[8][9]。
以後は「バーバリー・ロンドン」の後継ブランドとして、スコットランド発祥の防水コートの老舗の衣料会社マッキントッシュ(2007年に八木通商が買収)[10]と提携した「マッキントッシュ・ロンドン」を立ち上げ、約350の旧バーバリーの店舗のうち約260店を切り替える[11]とともに、若者向け婦人服「バーバリー・ブルーレーベル」、紳士服「バーバリー・ブラックレーベル」についても、新デザイナーを起用しそれぞれ後継ブランドとして「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」に転換した[12]。
しかしバーバリーを失った痛手は極めて大きく、自社ブランド中心への転換後の業績は低迷。4回にわたる希望退職の募集と3回の社長交代が行われるとともに、筆頭株主の米運用会社より経営陣の刷新や身売りを求められ、銀座の旗艦店ビルを売却するなど、再建途上にある。
沿革
編集- 1943年(昭和18年) - 株式会社三陽商会設立。
- 1945年(昭和20年) - レインコート販売開始。
- 1949年(昭和24年) - 百貨店への販売開始。
- 1969年(昭和44年) - 本社を東京都新宿区へ移転。総合アパレルメーカーへ。
- 1971年(昭和46年) - 東京証券取引所市場第2部上場。
- 1975年(昭和50年) - 長嶋茂雄をCMに起用。
- 1977年(昭和52年) - 東京証券取引所市場第1部へ指定替え。
- 1981年(昭和56年) - ニューヨークに現地法人設立。東京都江東区に「潮見商品センター」完成。
- 1996年(平成8年) - ミラノに現地法人設立。
- 2000年(平成12年) - 東京都中央区に「バーバリー銀座店」を開店。
- 2002年(平成14年) - 香港と上海に「駐在員事務所」開設。
- 2004年(平成16年) - 東京都渋谷区に「バーバリー表参道店」を開店。
- 2005年(平成17年) - 大阪市住之江区に「西日本商品センター」開設。
- 2006年(平成18年) - 初の海外直営店を中国・上海に開店。
- 2008年(平成20年) - 本店オフィスを汐留へ移転。
- 2012年(平成24年) - 本店を東京都新宿区へ移転。
- 2013年(平成25年) - 全社員の1割強に当たる約230人の希望退職を募集[13]。
- 2014年(平成26年) - マッキントッシュ社とライセンス契約。
- 2015年(平成27年) - バーバリー社とのライセンス契約終了。マッキントッシュロンドン展開開始。バーバリーを扱っていた銀座の旗艦店を自社ブランドを集積した大型店に改装[14]。
- 2016年(平成28年) - 全社員の2割弱に当たる約250人の希望退職を募集[15]。2017年2月末までに計8ブランドを休廃止し、全体の1割強にあたる190店舗を閉鎖する方針を発表[16]。
- 2017年(平成29年) - 杉浦昌彦社長が退任し、岩田功新社長が1月1日付で着任[17]。
- 2018年(平成30年) - 全従業員の約14%程度にあたる250人程度の希望退職者を募集[18]。
- 2020年(令和2年) - 岩田功社長が退任し、中山雅之新社長が1月1日付で着任[19]。筆頭株主である米運用会社のRMBが身売りを要求[20]。中山雅之社長が5ヶ月で退任し、大江伸治新社長が5月26日付で着任[21]。銀座の旗艦店ビルを売却[22]。2021年2月期に百貨店などの不採算店舗を中心に最大150店程度(その後160店に拡大)を閉鎖する方針を発表[23][24]。40歳以上の正社員を対象に募集人数を定めず早期退職を募集、保養所の売却を発表[25][26]。
- 2021年(令和3年) - 早期退職応募者を希望退職に移行するとともに、150人の希望退職を募集[27]。
- 2022年(令和4年) - TOPIXからの段階的な除外対象になることが公表[28]。
ブランド
編集レディース
編集- AMACA
- ECOALF
- EPOCA
- EPOCA THE SHOP
- MP STORE
- EVEX by KRIZIA
- CAST:
- GUILD PRIME
- STORY & THE STUDY
- TO BE CHIC
- TRANS WORK
- BLUE LABEL CRESTBRIDGE
- Paul Stuart
- MACKINTOSH PHILOSOPHY
- MACKINTOSH LONDON
- LOVELESS
メンズ
編集- ECOALF
- EPOCA UOMO
- MP STORE
- GUILD PRIME
- THE SCOTCH HOUCE
- STORY & THE STUDY
- BLACK LABEL CRESTBRIDGE
- Paul Stuart
- MACKINTOSH PHILOSOPHY
- MACKINTOSH LONDON
- LOVELESS
レディース&メンズ
編集- SANYO COAT
- 100年コート
- S.ESSENTIALS
- 三陽山長
脚注
編集- ^ コーポレート・ガバナンス - 株式会社三陽商会
- ^ “経済の死角 バーバリーに逃げられた!名門・三陽商会の「苦悩と決断」売り上げの半分を失う……会社は大丈夫なのか”. 現代ビジネス. 週刊現代. (2014年6月16日) 2014年7月9日閲覧。
- ^ a b “バーバリー、三陽と契約解除の裏”. ビジネスジャーナル. (2014年6月12日) 2014年7月9日閲覧。
- ^ “三陽商会、バーバリー販売終了へ 15年夏に”. 共同通信. (2014年5月19日). オリジナルの2015年1月8日時点におけるアーカイブ。 2014年5月24日閲覧。
- ^ “三陽商会、「バーバリー」販売終了へ 売上高3割相当”. 日本経済新聞. (2014年5月19日) 2014年5月24日閲覧。
- ^ “三陽商会「バーバリー・ロンドン」の後継に「マッキントッシュ ロンドン」を指名”. WWD.JAPAN.COM. (2014年5月19日) 2014年5月24日閲覧。
- ^ “バーバリー、三陽との契約終了へ 今後は独自販売”. 共同通信. (2015年6月29日) 2015年7月1日閲覧。
- ^ “三陽商会はなぜバーバリーを失ったのか 屋台骨喪失の内幕と、激化する跡地争奪戦”. 東洋経済オンライン. (2014年5月22日) 2014年5月24日閲覧。
- ^ “バーバリー、3年で日本の売上高4倍に 直営を拡大”. 日本経済新聞. (2014年5月21日) 2014年7月9日閲覧。
- ^ Return of the Mackintosh: Iconic label makes return with new store openingDaily Mail, 13 January 2011
- ^ 「三陽商会、英バーバリーとの契約が30日終了 後継事業育成急ぐ」『日本経済新聞電子版』 2015年6月30日
- ^ 「バーバリー契約切れの三陽商会、15億円赤字の見通し」『朝日新聞デジタル』 2016年6月25日
- ^ “三陽商会、初の希望退職募集 会長は退任”. 日本経済新聞. (2013年1月25日) 2013年1月25日閲覧。
- ^ “三陽商会、自社ブランド集めた大型店 東京・銀座に開業”. 日本経済新聞. (2015年9月18日) 2015年9月18日閲覧。
- ^ “三陽商会、希望退職250人募集 「バーバリー」終了響く 全社員の2割弱”. 日本経済新聞. (2016年6月24日) 2016年6月24日閲覧。
- ^ “三陽商会、17年2月までに8ブランドを休廃止”. 日本経済新聞. (2016年7月29日) 2016年7月29日閲覧。
- ^ “三陽商会、新社長に岩田氏 杉浦社長は退任”. 日本経済新聞. (2016年12月16日) 2016年12月16日閲覧。
- ^ “三陽商、250人の希望退職者募集 収益改善進まず”. 日本経済新聞. (2018年9月21日) 2018年9月21日閲覧。
- ^ “三陽商会、岩田社長が辞任 4期連続赤字見込みで引責”. 日本経済新聞. (2019年10月30日) 2019年10月30日閲覧。
- ^ “米運用会社のRMB、三陽商会に身売り要求”. 日本経済新聞. (2020年2月12日) 2020年2月12日閲覧。
- ^ “三陽商会、社長にゴールドウイン出身者、リストラ加速”. 日本経済新聞. (2020年4月14日) 2020年4月14日閲覧。
- ^ “三陽商会、銀座の旗艦店ビル売却 特別利益67億円”. 日本経済新聞. (2020年7月17日) 2020年7月17日閲覧。
- ^ “三陽商会、社長にゴールドウイン出身者、リストラ加速”. 日本経済新聞. (2020年4月14日) 2020年4月23日閲覧。
- ^ “三陽商、今期35億円の最終赤字 160の不採算売り場撤退”. 日本経済新聞. (2020年10月6日) 2020年10月6日閲覧。
- ^ “三陽商会、早期退職を募集 40歳以上、人員は定めず”. 日本経済新聞. (2020年12月21日) 2020年12月21日閲覧。
- ^ “三陽商会が正社員の早期退職募集、人数定めず 保養所も売却”. ロイター. (2020年12月21日) 2020年12月21日閲覧。
- ^ “三陽商会、希望退職で150人募集 13年以降4度目”. 日本経済新聞. (2020年1月21日) 2020年1月21日閲覧。
- ^ “三陽商会やポプラなど493社、TOPIXから段階的な除外対象に(朝日新聞デジタル)”. LINE NEWS. 2022年10月8日閲覧。
参考文献
編集- 木下明浩「三陽商会におけるブランドの発展」『立命館経営学』第44巻第5号、2006年、93-119頁、doi:10.34382/00000741。