メガラプトル類
メガラプトル類(学名:Megaraptora)は、他の獣脚類との類縁関係に議論のある、動物食性の獣脚類の恐竜の分岐群[7][8][9]。
メガラプトル類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
中生代前期 - 後期白亜紀[1] 130–66 Ma | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Megaraptora Benson, Carrano & Brusatte, 2010 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
下位分類群 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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メガラプトル類の理解は完全ではなく、また完全なメガラプトル類の骨格も発見されていないが、数多くの特異的な特徴が存在する。前肢は大型かつ頑強であり、尺骨はフクイラプトルとプウィアングヴェナトルを除くメンバーで特異的な形状をなす。第I指と第II指は長く、鉤爪は大型で湾曲しており、第III指は小型である[8]。メガラプトル類の頭蓋骨要素は非常に不完全であるが、2014年に記載されたメガラプトルの幼体は吻部が保存されており、細長い形状をしたことが判明している[9]。メガラプトル類に分類された後肢の骨は走行適応を果たしたコエルロサウルス類のものと同様に細長い[8]。メガラプトル類の体幹は太いが、彼らの骨は高度に含気化している。椎骨と肋骨および腸骨の含気化の程度は獣脚類の中でも珍しい水準に達しており、他の分類群ではネオヴェナトル科にしか見られない[7]。他の特徴的な形質には後側が窪んだ頸椎やコンプソグナトゥス科のものに類似する歯が挙げられる[8]。
メガラプトル類という分岐群は、元々2010年にアロサウルス上科・ネオヴェナトル科の下位分類群として命名された[7]。フェルナンド・ノヴァスらによる2013年の系統解析では、当該の分類は否定され、メガラプトル類は新たにティラノサウルス上科の派生的位置に置かれた[8]。その後、ノヴァスらの手法に改良がくわえられると、メガラプトル類はグアリコなど系統学的位置付けに議論のある他の獣脚類と共に非ティラノサウルス上科のコエルロサウルス類の基盤的位置に置かれ、第3の位置付けが台頭した[10]。どの系統的位置が正しいとしても、メガラプトル類がネオヴェナトル科型アロサウルス上科あるいは基盤的コエルロサウルス類のいずれかとの多大な収斂進化を遂げたことは明らかである[7][8]。
メガラプトル類の多様性は後期白亜紀の南アメリカで最も高く、特にパタゴニアにおいて顕著であった。しかし、彼らは広い分布域も有しており、タイ王国と日本にはそれぞれプウィアングヴェナトルとフクイラプトルという基盤的な属が生息していた。メガラプトル類の化石はオーストラリアでも普遍的であり[11]、同大陸の既知の範囲内で最大の捕食性恐竜であるアウストラロヴェナトルもまたメガラプトル類に属する[12]。
形態
編集メガラプトル類とされる獣脚類は中型から大型の属であり、全長4.2メートルのフクイラプトルから全長9メートルのアエロステオンがいる。バハリアサウルスも含めるのであれば、本属が全長13mで最大である[2]。メガラプトル類の大多数は非常に断片的な骨格のみから知られているが、複数の属種を当該分岐群として同定できる確かな形質が存在する。ムルスラプトルやアエロステオンといった少なくとも複数のメガラプトル類では、高度な含気骨(特に腸骨や肋骨)の空洞が肺と通じており、現生鳥類と共通する[13]。いくつかの種の細長い後肢と長い中足骨は、当該グループの走行適応を示唆する[7]。メガラプトル類の大多数はメガラプトル科を構成するが、当該分類群は2013年にフェルナンド・ノヴァスらにより命名されている。この科は基盤的なメガラプトル類であるフクイラプトルには存在しない、尺骨や鉤爪の複数の適応により設立された[8]。
頭蓋骨と歯
編集完全な頭蓋骨を保存したメガラプトル類の化石は発見されていないが、複数の分類群で頭蓋骨要素は知られている。アエロステオン、メガラプトル、オルコラプトル、ムルスラプトルは頭蓋骨の後部を構成する複数の骨が[13]、アウストラロヴェナトルは下顎が[12]、2014年に記載された幼体メガラプトル標本は頭頂骨断片と吻部を保存している。また歯は多くの属で発見されている。メガラプトル類の多くの復元では、頭蓋骨は長く華奢であり、また歯は小型かつ多数生え並んでいる[9]。
メガラプトルに基づくと、吻部先端の前上顎骨は小さく、長い杖状の枝が外鼻孔上に伸びる。鼻孔自体は非常に大型で長く、初期のティラノサウルス上科(ディロングやプロケラトサウルスなど)と類似する。また、吻部にはカルカロドントサウルス科との共通点も複数見られており、上顎骨の直線状の上側縁や長方形の鼻骨が共通する。頭蓋天井の頭頂骨はティラノサウルス上科と同様に矢状稜が強固に発達する[9]。頭蓋骨の後部は単純な形状をなしており稜や突起を持たない一方、複数の属において涙骨と後眼窩骨は凹凸を帯びる。アエロステオンとムルスラプトルの方形骨は含気化しており、ごく少数のアロサウルス上科(シンラプトルやマプサウルス)やティラノサウルス上科と共通する[13]。歯骨はアウストラロヴェナトルのみで知られている骨であるが、当該の骨は長く、ティラノサウルス上科と同様に第I歯が他の歯と比較して小型である。下顎は全体として単一のメッケル孔を持ち、カルカロドントサウルス類やティラノサウルス科およびオルニトミムス科と共通する[8]。しかし、ムルスラプトルで見られるように、下顎の後部はティラノサウルス上科よりも軽量な構造になっている。保存された神経頭蓋はカルカロドントサウルス類やティラノサウルス上科のものに類似する[13]。
メガラプトルの前上顎骨歯の形態は多岐に亘るが、ティラノサウルス上科のものに類似しており、小型で、鏨型をなし、断面はD字型である[9]。ただし、ムルスラプトルの前上顎骨は非ティラノサウルス上科獣脚類と同様に牙状である。メガラプトル類の上顎骨歯は一般に小型かつ頑強でエナメル質に被覆されているが、属間の多様性に富む。オルコラプトルやアウストラロヴェナトルおよびメガラプトルなどの属では、上顎骨歯の断面は8の字型で、鋸歯状構造を一切持たない[9]。一方ムルスラプトルは歯の先端部前側のみに鋸歯が存在し[13]、フクイラプトルの歯はカルカロドントサウルス類と同様に側方に薄い刃状であり、前後側の両方に鋸歯が存在する[13]。
脊柱と肋骨
編集メガラプトル類は頸椎の後方が強く窪む点で獣脚類の中でも特異的である[8]。前側が凸で後側が凹な椎骨はアロサウルス[14]や竜脚類に特徴的であり、剪断に対する防御を犠牲にすることなく高い柔軟性を促進する可能性がある[15]。一方で、神経棘が短く、横突起が椎体の頭尾中心付近に位置し、側腹腔(pleurocoels)として知られる外側の溝の対が存在する点で、メガラプトル類の頸椎はカルカロドントサウルス類のものにも類似する。事実、大半のメガラプトル類の椎骨には1本以上の側腹腔が存在しており、椎骨の中で小さな無数の空洞と複雑なシステムを接続する。メガラプトル類およびごく少数の他の樹脚類の椎骨のこの網状内部構造は、"camellate"として記載される[7][8]。
近位の尾椎には長軸方向の稜が下面に沿って走っており、これはネオヴェナトルと同様である一方、ティラノサウルス上科とは異なる[7]。またメガラプトル類の椎体の横突起からは、対になった外側稜が下側に伸びる。これらの稜は横突起の下に大型の孔(infradiapophyseal fossa)を形成する。これらの稜はlaminaeとも呼ばれ、他の獣脚類の胴椎にも存在するものの、メガラプトル類のものは尾の付け根でcentrodiapophyseal laminaeが発達している点で特異的である。時には胴椎のものよりも発達する場合がある。こうした特徴を共有する他の獣脚類はスピノサウルス科のみである[13]。メガラプトル類の稜の強い発達は、彼らの尾が上下に高く、また筋肉質であったことを示唆する可能性がある[9]。
肋骨は太く、湾曲し、また中空である。椎骨との接続部付近には孔が存在する。腹肋は幅広かつ頑強なパドル型構造であり、胸部の正中線上で左右が癒合する。これらの構造はメガラプトル類が幅広な体躯を有していたことを示しており、ティラノサウルス科における状態と類似する[9]。
前肢
編集メガラプトル類の上腕骨はS字型をなし、基盤的コエルロサウルス類や基盤的アロサウルス上科の両方と類似する。大部分のメガラプトル類の上腕骨はアロサウルスのものと同様に大型かつ頑強であるが、基盤的な属であるフクイラプトルはより細長い上腕骨を持つ[7]。上腕骨の遠位部は顆と溝の機構が発達しており、コエルロサウルス類(特にドロマエオサウルス科)と類似する[16]。
メガラプトル科の尺骨は複数の特徴的形質を持つ。肘頭は薄く刃状に発達し、尺骨体の長軸に沿って下る稜として伸びる。加えて、メガラプトル科は尺骨上にlateral tuberosityと呼ばれる別の長い稜状構造を獲得しており、当該の構造は肘頭のブレードと垂直である。結果として、最も基盤的であるフクイラプトルを除き、メガラプトル科の尺骨の断面はT字型をなし、前側突起・外側結節・肘頭により構成された3つの突出部が存在する。橈骨の形状は他の獣脚類と同様である[8][16]。
メガラプトル類の手もまた特徴的である[7][8]。第I指および第II指は大型かつ細長く、第III指が小型である。指の相対的な差異はティラノサウルス上科や他の基盤的コエルロサウルス類に見られるものと同様であるが、派生的なティラノサウルス上科を特徴づける前肢の退化傾向は見られない。メガラプトルは痕跡的な第IV中手骨を残しており、4本の指が生えていた初期の恐竜との関連が窺える。これは他のテタヌラ類では失われた原始的な特徴である。第I指および第II指の鉤爪は長大であり、メガラプトルに至っては尺骨の全長を上回る。他の数多くの獣脚類の大型の末節骨と異なり、メガラプトル類の鉤爪は薄く、楕円形の断面を持つ。メガラプトル科の鉤爪の平らな面の下縁には左右非対象の溝と鋭利な稜が走る。メガラプトル類の手根骨は癒合して半月型をなし、マニラプトル類のものと類似する[16]。
後肢
編集メガラプトル類の大腿骨はアウストラロヴェナトルとフクイラプトルでのみ発見されているが、コエルロサウルス類のものと複数の点で類似する。例えば、大転子が卓越しており、深い窪みにより大腿骨体から隔てられている。大転子が大型であるため、大腿骨の臀部のソケットは上から見た際に長方形をなしており、大転子が小さく大腿骨が上から見て涙型をなす非コエルロサウルス類獣脚類と異なる。大腿骨頭はカルカロドントサウルス類(特にカルカロドントサウルス科)や一部のコエルロサウルス類に見られるように僅かに上向きである。メガラプトル類において、膝付近の大腿骨の部位は前側から見ると非対称である。これは、外側顆が内側顆よりも遠位に突出するためである[8]。
脛骨もコエルロサウルス類のものに類似し、長く薄い形状を持つ。脛骨外側顆の前側は下側に湾曲し、ネオヴェナトルやタニコラグレウスおよび複数のティラノサウルス上科と類似する。内側および外側の踝は拡大しており、互いに離れる向きに突出しており、派生的ティラノサウルス上科(両方)やカルカロドントサウルス類(内側のみ)と類似する。脛骨遠位端の前側にはコエルロサウルス類と同様に距骨との平坦な関節面が存在する。当該関節面の内側縁はメガラプトル科に特有の稜により定義される。関節面の上側縁は距骨の上に卓越した控え壁を持たず、アロサウルス上科と異なる。距骨の上行突起は関節面上に存在し、大型の台形に拡大する。これはコエルロサウルス類と類似する一方で、上行突起が小型かつ三角形であるアロサウルス上科とは異なる[8]。フクイラプトル、アウストラロヴェナトル、アエロステオンは距骨の外側縁に明瞭な前側突出部を持ち、フクイラプトルとアウストラロヴェナトルは後方に突出するさらなる突起も有する[7]。
コエルロサウルス類と同様に、腓骨も長く、また膝から強く先細る。腓骨はコエルロサウルス類と同様に距骨の外側縁上の小さな関節面と接続しており、上側縁と接続するアロサウルス上科と異なる。膝付近および脛骨との関節面では、腓骨にはproximomedial fossaとして知られる幅の広い溝あるいは窪みが存在する。メガラプトル類の第III中足骨]はいずれもコエルロサウルス類と同様に細長い。中指との関節は足底-足背方向に高くかつ滑車型をなし、深い三日月形の窪みを足底側から確認できる[8]。
臀部
編集腸骨は高度に含気化し、空洞に占められている。腸骨が含気化した他の大型獣脚類として知られているものはネオヴェナトルのみである[7]。複数のメガラプトル類において、preacetabular bladeは前側縁に沿って切痕を持ち、ティラノサルス上科と類似する。やや下方には、preacetabular bladeとpubic peduncleの間に窪みが存在する。当該の窪みはcuppedicus fossaあるいはpreacetabular fossaとして知られ、腸骨の内側面上の卓越した棚状構造により周囲を縁取られている。この傾向は様々なコエルロサウルス類やキランタイサウルスにも見られており、ネオヴェナトルも該当する可能性がある。一方でpostacetabular bladeは大型の窪みを欠く。コエルロサウルス類を除くテタヌラ類において、腸骨のこの部位にはbrevis fossaとして知られる大型の窪みが存在し、腸骨の外側面から確認できる。しかし、コエルロサウルス類とメガラプトル類はbrevis fossaが小型であり、腸骨の後縁の部位のみを占め、外側から確認することもほぼ不可能である[8]。
坐骨はムルスラプトルにおいてのみ確認されている。坐骨は僅かに拡大していて、カルカロドントサウルス科のものに類似する[13]。恥骨は先端部が鎌状に発達しており、恥骨体の長さの60%を超過する。当該の適応はピュービック・ブーツとして知られ、カルカロドントサウルス類やティラノサウルス科にも知られる。また、恥骨は腸骨との接触部の付近で拡大する。左右の恥骨は互いに完全には癒合しておらず、楕円形の穴により正中線に沿って隔てられる[8]。
進化と起源
編集古生物地理的評価がフィル・ベルやスティーヴ・サリスバリーらによって行われ、オーストラリアのライトニング・リッジの南西部から産出した未命名のメガラプトル類(大衆メディアにより"Lightning Claw"と呼称、おそらくラパトルのシノニム)の記載が加えられた。当該の研究から、メガラプトル類は最後期ジュラ紀(約1億5000万年前 - 1億3500万年前)にアジアで出現し、前期白亜紀(約1億3000万年前 - 1億2100万年前)にゴンドワナ大陸のメガラプトル科に繋がる系統が多様化し、オーストラリアを通じて後期白亜紀のゴンドワナのメガラプトル科の放散に至ったとされる。また、当該の標本から、メガラプトル類の系統的位置がティラノサウルス上科とカルカロドントサウルス科のいずれに置かれるのかといった系統的検証が可能となった[11][17]。これはLamanna et al. (2020)により拡張された。Lamanna et al. (2020)では、メガラプトル類の分布域拡大はオーストラリア大陸から南極大陸を介して南アメリカ大陸へ至ったとされ、またそれに伴う体サイズの増大があったとされる。メガラプトル科の体サイズは白亜紀末の大量絶滅まで維持された[18]。
分類
編集初期の仮説
編集メガラプトル類を構成する属は様々な獣脚類のグループに置かれてきたが、2010年に一つの分岐群として纏められた。メガラプトルとフクイラプトルは1990年代に発見された際それぞれ独立に大型のドロマエオサウルス科恐竜と考えられていたが、これは前肢の大型の鉤爪が後肢のものとして誤同定されたためであった。これらの誤りは、ホロタイプの観察(フクイラプトル)や新標本の発見(メガラプトル)を経て修正された。2000年代中盤まで、彼らは基盤的テタヌラ類と考えられ、主にアロサウルス上科に置かれた。Smith et al. (2008)ではオーストラリアから産出したメガラプトルに類似する尺骨が報告され、メガラプトルはスピノサウルス上科として扱われた。同年に巨大なコエルロサウルス類として記載されたオルコラプトルは、より小型のコンプソグナトゥス科との類似性を複数示していた。アエロステオンはアロサウルスに近縁な恐竜、アウストラロヴェナトルはカルカロドントサウルス科の姉妹群に置かれた。
ネオヴェナトル科での位置付け
編集この2000年代後半の新たなデータの流入は、基盤的テタヌラ類の系統の主要な再解析に繋がり、メガラプトル類は新たな系統関係がみちびかれた。ロジャー・ベンソンらによる2010年の研究では、アロサウルス上科(あるいはカルノサウルス類とも)がカルカロドントサウルス類と呼ばれる下位分類を包含した。カルカロドントサウルス類はカルカロドントサウルス科と新たな科であるネオヴェナトル科に細分された。彼らにより設立されたネオヴェナトル科にはネオヴェナトルとキランタイサウルスおよび新たに命名された分岐群であるメガラプトル類が含まれた。メガラプトル類にはメガラプトル、フクイラプトル、オルコラプトル、アエロステオン、アウストラロヴェナトルが含まれた。これらの属は骨格全体に広がる複数の特徴、特に顕著な含気化によって他のネオヴェナトル科と同列に扱われるようになった。特に腸骨の含気化は、当時ネオヴェナトルが唯一持っていた特徴であり、注目を浴びた。ネオヴェナトルは後期白亜紀まで生存したアロサウルス上科であり、その低い体格とコエルロサウルス類に似た適応から、最も遅くまで生き残ることができたと考えられている[7]。当該の仮説を支持する後続研究としてはCarrano, Benson & Sampson (2012)のテタヌラ類の包括的研究[19]やZanno & Makovicky (2013)によるシアッツの記載があり、後者でシアッツはメガラプトル類に分類された。フクイラプトルとアウストラロヴェナトルは互いに近い関係にあることが常に示唆されており、アエロステオンとメガラプトルも同様である。オルコラプトルは正確な位置を定めることが難しいワイルドカードであった。
以下のクラドグラムはメガラプトル類をアロサウルス上科のネオヴェナトル科に位置付けるBenson, Carrano, & Brusatte (2010)の仮説の最新版を反映している[7]。クラドグラムはCoria & Currie (2016)のものであり、Novas et al. (2013)により記載されたムルスラプトルがメガラプトル類に加えられている[13][20]。
アロサウルス類 |
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ティラノサウルス上科での位置付け
編集Fernando Novas et al. (2012)では新たな類縁仮説が提唱された[21]。Novasらはネオヴェナトルとメガラプトル類を結び付ける形質が2010年の論文で示唆されたよりも遥かに広範であると主張し、コエルロサウルス類の収斂がメガラプトル類とコエルロサウルス類の正当な繋がりを意味すると提唱した。さらに、彼らはBenson, Carrano, & Brusatteの研究ではコエルロサウルス類のサンプル数が僅か3であることを指摘した。Novasらの主張は2013年に論文化され、メガラプトル類はカルカロドントサウルス類からコエルロサウルス類に移され、ティラノサウルス上科の派生的位置に置かれた。Novas et al. (2013)ではネオヴェナトル科から除去されたメガラプトル類はメガラプトル科として命名され、基盤的なフクイラプトルを除くメガラプトル類が全て包含された。彼らはキランタイサウルス、ネオヴェナトル、シアッツがメガラプトル類である証拠が乏しいとした一方、ティラノサウルス上科のエオティラヌスをメガラプトル類に挿入しなかった。彼らはメガラプトル類とティラノサウルス科が近縁であると仮説を立てたが、メガラプトル類の系統がティラノサウルス類とは逆の方向に分岐した機能的な形態を持つことを指摘した。ティラノサウルス科の前肢が小型で頭部が大型かつ強力である一方、メガラプトル類は前肢が大型で、鉤爪も巨大であり、顎は相対的に弱い[8]。新たに発見されたメガラプトルの幼体の頭蓋骨は2014年に記載され、ディロングといった基盤的ティラノサウルス上科の頭蓋骨との類似性ゆえに仮説を補強した。とはいえ、メガラプトル類がカルカロドントサウルス類と共通する形質を多く持つことも事実であり、分類は依然として不確かである[9]。
以下のクラドグラムはメガラプトル類をティラノサウルス上科に置くNovas et al. (2013) の仮説を支持するものである。クラドグラムが準拠するPorfiri et al. (2014)では、メガラプトルの幼体標本が記載された。グアリコ、ムルスラプトル、トラタイェニアは当該の研究の間にまだ記載されていなかった[9]。
アヴェテロポーダ類 |
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2016年、ノヴァスらはメガラプトル類の手の解剖学的研究を発表し、彼らの分類学的疑問への手がかりにしようとした。彼らはグアンロンやデイノニクスといった派生的なコエルロサウルス類の手に見られる重要な形質がメガラプトル類では失われていることを発見した。また、その代わりにメガラプトル類の手にはアロサウルスな基盤的なテタヌラ類に見られる原始的な特徴が多く残されていた。しかし、依然としてメガラプトル類をコエルロサウルス類の系統として支持する形質も多く存在する[16]。2016年のBell et al.の研究ではメガラプトル類をティラノサウルス上科とする仮説が支持されているが、これはPorfiri et al. (2014)ではメガラプトルの頭蓋骨のデータが追加されていることと、Benson, Carrano, & Brusatte (2010)よりも幅広くコエルロサウルス類のデータが用いられているためである[11]。Motta et al. (2016)もこれに同意し、断片的なパタゴニアの獣脚類であるアオニラプトルを非メガラプトル科のメガラプトル類として提唱した。彼らの研究ではアオニラプトルとデルタドロメウスおよびバハリアサウルスの類似性が指摘され、これら2属の基盤的メガラプトル類とされ、3属でバハリアサウルス科を構成しうるとされた[2]。2019年のムルスラプトルの再記載では、Rolando, Novas, & AgnolínはApesteguia et al. (2016)のデータセットを用い、メガラプトル類をティラノサウルス上科における多分岐とした[22]。
以下のクラドグラムはNaishとCauによる 2022年の研究によるもの[23]。
ティラノサウルス上科 |
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非ティラノサウルス上科コエルロサウルス類としての位置付け
編集2016年、メガラプトル類の類縁関係に関してPorfiri et al. (2014)から派生して第3の仮説が提唱された。Sebastian Apesteguíaらは新たな獣脚類グアリコを記載し、グアリコとデルタドロメウスをNovas et al.のデータセットに追加して修正も行い、系統解析を実施した。メガラプトル類はNovas et al.のデータセットで当初支持されていたティラノサウルス上科から取り除かれ、アロサウルス上科は側系統群とされた。メガラプトル類は伝統的なコエルロサウルス類と近い位置に置かれた[6]。
Porfifi et al. (2018)ではApesteguía et al. (2016)のデータセットが拡張され、新たに2つのメガラプトル科が追加された[10]。結果は異なったものの、手法はApesteguia et al. (2016)と実質的に同じであった[6]。追加された属の一つはグアリコと同時期に記載されたムルスラプトルで[13]、もう一つは新属トラタイェニアであった。Porfiri et al. (2018)はトラタイェニアとムルスラプトルをメガラプトル科に置き、フクイラプトルをメガラプトル類の最も基盤的位置に置いた。しかし、メガラプトル類はコエルロサウルス類の最も基盤的な位置でキランタイサウルスやグアリコおよびティラノラプトル類と共に多分岐をなした。非コエルロサウルス類獣脚類も、ネオヴェナトルの位置が不安定なため、大きな多分岐が形成された。またPorfifi et al. (2018)はMotta et al. (2016) のバハリアサウルス科の設立について言及し、グアリコがデルタドロメウスとの類似点からバハリアサウルス科である可能性を指摘した。その場合、メガラプトル類はこれまで考えられていたよりも遥かに前肢の多様性が高く、グアリコは非常に小さくティラノサウルス科に似た前肢を持っていたことになる[10]。
2018年、Delcourt & Grilloはティラノサウルス上科に焦点を当てた研究を発表した。彼らはPorfiri et al. (2018)の解析にスコアリングの修正と新たなデータの追加を行い、解析を実行した。結果として、ネオヴェナトルは単系統のアロサウルス上科に置かれ、メガラプトル類は非ティラノサウルス上科の基盤的コエルロサウルス類とされ、キランタイサウルスやグアリコと近縁な位置に置かれた。ムルスラプトルはフクイラプトルの次に基盤的なメガラプトル類とされた[24]。
以下のクラドグラムはDelcourt & Grillo (2018)の系統解析に従う。
アヴェテロポーダ類 |
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2022年のマイプの記載では、メガラプトル類はコエルロサウルス類に置かれ、特にティラノサウルス上科の姉妹群として扱われた。これは先行研究に沿うものであり、ティラノサウルス上科とメガラプトル類の近縁性が示唆されている。また、同研究ではフクイラプトルとアウストラロヴェナトルを除く包括的分岐群(分岐群A)と南アメリカのメガラプトル類を全て含む排除的分岐群(分岐群B)の2つの分岐群が提唱された[25]。
以下のクラドグラムはマイプの記載においてRolando et al. が行った系統解析の結果である。
コエルロサウルス類 |
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出典
編集- ^ Novas, F., Agnolin, F., Rozadilla, S., Aranciaga-Rolando, A., Brissón-Eli, F., Motta, M., Cerroni, M., Ezcurra, M., Martinelli, A., D'Angelo, J., Álvarez-Herrera, G., Gentil, A., Bogan, S., Chimento, N., García-Marsà, J., Lo Coco, G., Miquel, S., Brito, F., Vera, E., Loinaze, V., Fernandez, M., & Salgado, L. (2019). Paleontological discoveries in the Chorrillo Formation (upper Campanian-lower Maastrichtian, Upper Cretaceous), Santa Cruz Province, Patagonia, Argentina. Revista del Museo Argentino de Ciencias Naturales, 21(2), 217-293.
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