チモロール(Timolol)は非選択的交感神経β受容体遮断薬であり、点眼薬として緑内障の治療に使われるほか、海外では経口薬として心筋梗塞高血圧片頭痛の治療にも用いられる。商品名チモプトール緑内障領域では、タフルプロスト炭酸脱水酵素阻害薬との配合剤も開発されている。

チモロール
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 チモプトール
Drugs.com monograph
MedlinePlus a602022
胎児危険度分類
  • AU: C
  • US: C
法的規制
  • (Prescription only)
薬物動態データ
生物学的利用能60%
代謝Hepatic: 80%
半減期2.5-5 hours
排泄Renal
データベースID
CAS番号
26839-75-8 チェック
ATCコード C07AA06 (WHO) S01ED01 (WHO)
PubChem CID: 33624
IUPHAR/BPS英語版 565
DrugBank DB00373 チェック
ChemSpider 31013 チェック
UNII 5JKY92S7BR チェック
KEGG D08600  チェック
ChEBI CHEBI:9599 チェック
ChEMBL CHEMBL499 チェック
化学的データ
化学式C13H24N4O3S
分子量316.421 g/mol
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WHO必須医薬品モデル・リスト2に収載されている[1]

チモプトール点眼薬

効能・効果

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点眼薬に認められている効能・効果は、緑内障と高眼圧症である。

海外の経口薬は、高血圧の治療、心筋梗塞の予防、片頭痛の予防 に使用される[2]

緑内障

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点眼薬として用いると、毛様体上皮のβ受容体を遮断して房水の産生を減少させるので、開放隅角緑内障および偶発性二次性緑内障を治療できるが、その薬理学的機序は未だ不明である。米国では1978年に初めてβ遮断薬点眼薬が緑内障治療薬として承認された。単剤で使用した場合、最初の数日の点眼で眼圧(IOP)を18-34%低下させる。しかし一部の患者では、短期的なescape[注 1]と長期的なdrift[注 2]が起こり、耐性が形成される[3][4][5]。眼圧は最大で50%低下する。プロプラノロールに較べて作用は5-10倍強い。ピロカルピンまたは炭酸脱水酵素阻害薬と併用できる[6]

  1. ^ 投与初期に眼圧が低下した後、数日から数週間後に反跳上昇し、さらに2〜4週間後に再度低下して安定する。
  2. ^ 投与を継続すると作用が減弱する。1-2ヶ月の休薬で効果が回復する。

コクラン共同計画で成人の開放隅角緑内障に対するチモロールとブリモニジンの症状進行防止効果が比較され、ブリモニジンの方が効果が高いことが示された[7]

副作用

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点眼薬の重大な副作用として、眼類天疱瘡、気管支痙攣(0.1%未満)、呼吸困難(0.1%未満)、呼吸不全、心ブロック(0.1%未満)、鬱血性心不全、脳虚血、心停止、脳血管障害、全身性エリテマトーデスが記載されている。(頻度未記載は頻度不明。)

点眼薬で0.1-5%に発生する副作用として、眼の刺激症状・炎症・疼痛、視力障害、角膜障害、結膜充血、眼乾燥感、眼瞼下垂、不整脈(頻脈、徐脈等)が記載されている。

そのほか、失神心不全抑うつ混乱英語版レイノー現象勃起不全が発生し得る。

剤形

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タプコム配合点眼液
チモロールとタフルプロストの配合剤

点眼薬には、チモロール単剤のほか、ブリンゾラミドドルゾラミドラタノプロストタフルプロストトラボプロスト のそれぞれとの合剤がある。

経口剤(海外)には、錠剤と液剤がある。

出典

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  1. ^ WHO Model List of EssentialMedicines”. World Health Organization (October 2013). 22 April 2014閲覧。
  2. ^ Dawn A. Marcus; Philip A. Bain (27 February 2009). Effective Migraine Treatment in Pregnant and Lactating Women: A Practical Guide. シュプリンガー・ジャパン株式会社. pp. 141–. ISBN 978-1-60327-438-8. https://books.google.co.jp/books?id=Z5YWpjj89NEC&pg=PA141&redir_esc=y&hl=ja 14 November 2010閲覧。 
  3. ^ Boger WP (1979). “Timolol: short term "escape" and long term "drift".”. Ann Ophthalmol 11 (8): 1239-42. PMID 556152. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/556152. 
  4. ^ Mark B. Abelson, MD, and Amy Vashishan (2006年3月16日). “The Truth about Tachyphylaxis”. review of ophthalmology. 2016年6月19日閲覧。
  5. ^ Toshiaki YAMAMURA (2004年11月28日). “timolol holiday IOP drift タキフィラキシー 緑内障”. evidence-based medicine. 2016年6月19日閲覧。
  6. ^ “A multicenter study comparing dorzolamide and pilocarpine as adjunctive therapy to timolol: patient preference and impact on daily life”. J Am Optom Assoc 69 (7): 441–51. (Jul 1998). PMID 9697378. 
  7. ^ Sena DF, Lindsley K (2013). “Neuroprotection for treatment of glaucoma in adults.”. Cochrane Database Syst Rev (2): CD006539. doi:10.1002/14651858.CD006539.pub3. PMC 4261923. PMID 23450569. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4261923/. 

外部リンク

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  • Weinstock, Leonard M.; Mulvey, Dennis M.; Tull, Roger. (1976). “Synthesis of the .beta.-adrenergic blocking agent timolol from optically active precursors”. The Journal of Organic Chemistry 41 (19): 3121–3124. doi:10.1021/jo00881a011. PMID 9497.