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{{Otheruses|活動|[[フォード・マドックス・ブラウン]]の絵画|{{仮リンク|労働 (絵画)|en|Work (painting)}}}}
[[ファイル:Lewis Hine Power house mechanic working on steam pump.jpg|thumb|[[ルイス・ハイン]]の労働者の[[写真]]]]
{{Labor}}
{{wiktionary|労働|労働者}}
 
'''労働'''(ろうどう、{{lang-en-short|Labor}})とは、[[人間]]が[[自然]]に働きかけて、[[生活手段]]や[[生産手段]]などをつくり出す活動のこと<ref>[[広辞苑]] 第五版 p.2845</ref>([[経済学]])。からだを使って働くこと<ref>大辞泉</ref>。
 
* からだを使って働くこと<ref>大辞泉</ref>。
* ([[経済学]])[[人間]]が[[自然]]に働きかけて、[[生活手段]]や[[生産手段]]などをつくり出す活動のこと<ref>[[広辞苑]] 第五版 p.2845</ref>。
==概要==
[[人間]]と[[自然]]との関係にかかわるある種の過程を「労働」と呼び<ref name="britanica">ブリタニカ百科事典</ref>、人間が自身の行為によって、自然との関係を統制し、[[価値]]ある対象を形成する過程を「労働」と呼ぶ<ref name="britanica" />。
 
人間は古今東西、太古から現代にいたるまで、どの地域でも、何らかの[[生産]]活動により生きてきた<ref name="ts">{{Cite |和書|title=哲学思想事典 |publisher=[[岩波書店]] |date=1998 |pages=1736-1737}}</ref>。そうした生産活動を「労働」と[[解釈]]するようになったのは、[[近代]]以降である<ref name=ts />。
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==歴史==
=== 未開社会 ===
未開社会(現代文明の感化を受けていない社会)の人々も、昔も今も、文明化された現代人と同様に生産活動を行っている<ref name=ts />。生産形態が狩猟採集であれ、農耕であれ、人々は生活手段を獲得して、それを[[共同体]]のメンバーに分配する<ref name=ts />。未開人の生産活動と、現代人の「労働」とは、見かけは同一のようではあるが、その生産活動を実際に生きて解釈するしかたというのは、現代人のそれとは異なっている<ref name=ts />。未開社会の生産当事者にとっては、生産活動は[[宗教]]・[[芸術]]・[[倫理学|倫理]]を生きているのであって、決して文明人が言うところの「労働」をしているのではない<ref name=ts />。
 
=== 古代ギリシア ===
[[ヘシオドス]]の文献に書かれているように、農業活動は同時に[[宗教]]的行為であり、また共同体の規範が重層した[[倫理学|倫理]]であった<ref name=ts />。近代的な意味での「労働」ではなかった<ref name=ts />。
 
また、古代ギリシアの[[ポリス]]で活動していた[[職人]]らの生産活動は、テクネーやポイエーシスと呼ばれていたのだが、それは事物の本性が現れる事態に立ち会う行為、であって、持続的有用物を製作し、それを通じ閉じた宇宙の中で自己の位置を確認し、またそれを他人から承認されることであった<ref name=ts />。つまり現代人が言うような「道具によって自然を征服する労働」ではなかったのである<ref name=ts />。
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{{Quotation|第3章19節:(省略)あなたが大地に戻るまで、あなたは顔に汗して、[[食品|食物]]を得ることになろう。(以下略)<ref name="suiboku"/>}}
{{See also|労働懲罰説}}
 
===プロテスタンティズム===
[[プロテスタント]]は労働そのものに価値を認める天職の概念を見出した。この立場では、節欲して消費を抑えて投資することが推奨される。このようなプロテスタンティズムの倫理こそが史的システムとしての[[資本主義]]を可能にしたと考えた者に[[マックス・ウェーバー]]がいる。ただ、[[スイス]]の宗教改革者達の意見によれば、[[キリスト教]][[宗教改革]]([[16世紀]]([[中世]]末期))時、[[カトリック教会|ローマ教会]]の「むやみやたらに施しを与えるという見せかけの慈善を認めていた」ことに対抗するために「真のキリスト教徒は勤勉と倹約の徳を」と強く主張しなければならなかった背景があったという<ref>宗教と資本主義の興隆、上巻―歴史的研究― リチャード・ヘンリー・トーニー著 出口勇蔵・越智武臣訳 岩波書店 1956年 ISBN 9784003421116 p183</ref>。[[ヨーロッパ]]の国家はその影響により、「労働は神聖なもの」「働くことは神のご意志」とされていて、労働しない者は[[神]]や[[国家]]に反逆するもの([[国家反逆]])とされていた。たとえば[[フランス]]では[[1656年]]に「一般施療院令」とその強化令が発せられ、労働をしない者を[[ハンセン病|癩]](らい)施療院だった建物を転用して収容した<ref>精神障害のある人の人権 関東弁護士会連合会 明石書店 2002年 ISBN 9784750316215 p39-40</ref>。
 
===近代主流派経済学===
近代主流派経済学では、労働は家計(労働供給側)における[[非効用]]として捉えられる。この立場では、労働は節約されるべき[[費用]]であるにすぎない。反対に余暇は[[効用]]として捉えられているが、これは主として個人的な私生活における[[娯楽]]を想定したもので、古代ギリシアにおける公共生活に携わるための閑暇とは異なるものである。
 
===マルクス経済学===
[[労働価値説]]に基づく[[マルクス経済学]]では、労働そのもの・労働手段・労働対象の各々は労働過程を構成する。この労働過程は、人間と自然との間の物質代謝の一般的な条件([[カール・マルクス|マルクス]])であり、自然を変化させて生活手段を作り出すばかりでなく、自分自身の潜在的な力をも発展させる。いわば道具を作る動物a tool-making animal(フランクリン)として人間を捉えるこの立場からは、労働手段の使用こそが人間の労働の本質であって、人間を動物から区別するものは労働である(しかし、現実には理論的に動物と人間は区別できない。人間は動物の部分集合なのである。)。労働行為は超歴史的なものとされ、これがいかに社会的制約を受けるかという視点から[[歴史哲学]]にも連結する。また私的な労働は、その成果である生産物が商品として交換されて社会的労働となることによってはじめて、社会的分業の一部となる。またラテン語のalienato(他人のものにする)に由来する[[疎外]]<!--entfremdung-->された労働が語られる。<!--とりあえず-->
 
===近代経済学===
近代経済学では、労働は家計(労働供給側)における[[非効用]]として捉えられる。この立場では、労働は節約されるべき[[費用]]であるにすぎない。反対に余暇は[[効用]]として捉えられているが、これは主として個人的な私生活における[[娯楽]]を想定したもので、古代ギリシアにおける公共生活に携わるための閑暇とは異なるものである。
 
==日本の法律==
日本において「[[労働法]]」とは、個々の法律の名称ではなく、労働事件の[[最高裁判所]][[裁判例]]等における法律判断を含めた、全体としての法体系を指す。最高法規である[[日本国憲法]]においては、[[労働基本権]]、[[労働運動]]、「[[勤労の義務]]、権利」などの概念や規定が記されている。これを受け、[[労働基準法]]、[[労働組合法]]、[[労働関係調整法]]、[[雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|男女雇用機会均等法]]、[[最低賃金法]]、[[労働安全衛生法]]、[[労働契約法]]等諸種の法令が施行されている。
*[[日本国憲法]]
{{main|労働法#日本}}
日本国憲法においては、[[労働基本権]]、[[労働運動]]、「[[勤労の義務]]、権利」などの概念や規定が記されている。
*[[労働法]]
: [[労働基準法]]、[[労働組合法]]、[[労働関係調整法]]、[[雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|男女雇用機会均等法]]、[[最低賃金法]]、[[労働安全衛生法]]、[[労働契約法]]等
 
===法律上の労働者の定義===
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===雇用形態による区別===
労働者はその勤務態様によって、次の3つの区分けされる。
まず契約期間によって無期([[期間の定めのない労働契約]])と有期([[期間の定めのある労働契約]])とに大別される。さらにそれぞれについて、各企業の[[就業規則]]て定める[[所定労働時間]]の上限(フルタイム)まで労働する者と上限に満たない(パートタイム)者とに分けられる。
*企業に[[直接雇用]]される者であるか、そうでない([[間接雇用]])者か。
*契約期間が無期([[期間の定めのない労働契約]])であるか、有期([[期間の定めのある労働契約]])であるか。
まず契約期間によって無期([[期間の定めのない労働契約]])と有期([[期間の定めのある労働契約]])とに大別される。さらにそれぞれについて、*各企業の[[就業規則]]て定める[[所定労働時間]]の上限(フルタイム)まで労働する者か、上限に満たない(パートタイム)者とに分けられであ
 
このうち、直接雇用・無期かつフルタイムであるの3つをすべて満たす労働者を'''[[正社員]]'''として<ref>読売新聞2020年12月20日付朝刊言論面</ref>、企業は中核的労働者として位置付ける。それ以外の一つでも欠ける者は'''非正規雇用'''労働者([[アルバイト]]、[[非常勤|パート]]、[[契約社員]]、[[派遣社員]]等)として、正社員を中心とした企業秩序の周縁に位置付ける。正社員とそれ以外の者とでは契約形態や適用される労働条件に区別があることが多い
 
'''[[コース別人事管理制度]]'''を設けている企業においては、正社員はさらに、幹部職員及び将来の幹部候補である[[総合職]]と、専ら定型的・補助的業務に従事する[[一般職]]とに区別される。
 
これらの区別は採用時から行われるが、近年では雇用期間中にこれらの区分を行き来したり、あるいはこれらの中間的な働き方(いわゆる「多様な正社員」<ref>[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/tayounaseisyain.html 「多様な正社員」について] 厚生労働省</ref>等)を認める企業も増えている。
 
==国際労働基準==
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また、国家単位でなく国際的に決定する理由として「いずれかの国が人道的な労働条件を採用しないことは、自国における労働条件の改善を希望する他の国の障害となるから」(ILO憲章より引用)である。障害となる根拠としては労働条件を守らないことで不当に製品の金額が安くなる([[ソーシャルダンピング]])などが挙げられる。
 
しかし、日本はILO[[常任理事国]]でありながら下記条約のほとんどを[[批准]]しておらず2021年現在有効なILOが採択した189条約183のうち4849条約しか[[批准]]していない<ref>[https://www.ilo.org/tokyo/standards/lang--ja/index.htm 国際労働基準(基準設定と監視機構)] 国際労働機関</ref>。下記条約のうち批准しているものは最低賃金決定制度(第26号・第131号)のみであり、労働時間・休暇に関してはひとつも批准していない。日本の労働法制は大筋ではILO条約に準拠し倣ったものとなっているが、種々の例外規定がありを定めていることから政府は批准に消極的で実際の企業実務ではこの例外規定をどう適用していくかが問題となる。
 
具体的な労働条件としては以下のようになっている。
 
;[[労働時間]]({{Nobold|(第1号・第30号・第47号)}}
:労働時間は'''一日あたり8時間以内、かつ一週あたり48時間以内'''とされている。適用されない者としては「監督の立場にある者」や「秘密の事務に従事している者」などである。また、特定条件のもとでは特定日に8時間を越えたり、特定週に48時間を越えたりすることは許されるが、この場合でも'''3週間の労働時間の平均が1日8時間・1週48時間を超えてはいけない'''。業種により多少の違いがあるが、工業・商業・事業所など通常の労働者に対して同程度の労働時間となっている。
:
 
;[[週休|休暇]]({{Nobold|(第14号・第18号・第132号)}}
:週休は週に一日以上。[[有給休暇]]は1年勤務につき3労働週(5日制なら15日、6日制なら18日)以上となっている。また、'''休暇は原則として継続したものでなければならない'''が、事情により分割を認めることもできる。ただし、その場合でも分割された一部は'''連続2労働週を下回ってはならない'''。また、「休暇権の放棄等は国内事情において適当である場合は禁止または[[無効]]とすること」となっている(フランスでは休暇権の放棄は禁止されている)。
:
 
;[[賃金]]({{Nobold|(第26号({{Smaller|(日本も批准))}}・第95号・第131号({{Smaller|(日本も批准)))}})}}
:すべての賃金労働者に対して[[最低賃金]]を定め、かつ随時調整できる制度が必要である。最低賃金としては、労働者が家族を養える一般的賃金や生活費や社会的集団の生活水準を考慮したものでなければならず、また、経済的な要素(生産性や雇用の維持・発展性など企業側から見た要素)も考慮しなければならない。最低賃金制度の設置、運用及び修正に関しては、関係ある代表的な労使団体と十分協議する必要がある。
 
==労働者の権利==
[[国際労働機関]]では、労働者の基本的権利に関する原則として次のものを挙げ、加盟国に(個々の条約の批准・未批准に関わりなく)推進かつ実現する義務を課している。
 
:(a)[[結社の自由]]及び[[団体交渉権]]の効果的な承認
{{ol|style=list-style-type:lower-latin
:(b)あらゆる形態の[[強制労働]]の禁止
:(c)|1 = [[児童労働結社の自由]]及び[[団体交渉権]]の的な廃止承認
:(b)|2 = あらゆる形態の[[強制労働]]の禁止
:(d)雇用及び職業における差別の排除
|3 = [[児童労働]]の実効的な廃止
:(d)|4 = 雇用及び職業における差別の排除
}}
 
==労働関係の機関==
118 ⟶ 123行目:
*[[第3次産業]]
*[[6次産業]]
*[[第四次産業革命]]
 
**[[第次産業革命]]
 
==雇用==
141 ⟶ 146行目:
*[[感情労働]]
 
金銭的な報酬が発生しない労働は無償労働(アンペイド・ワーク)と呼ばれる<ref>[[筒井淳也]]、前田泰樹 『社会学入門:社会とのかかわり方』 有斐閣 <有斐閣ストゥディア> 2017年、ISBN 9784641150461 pp.84-87.</ref>。生活に必要な[[家事|家庭内労働]]や、報酬の発生しない[[ボランティア]]などの[[社会活動]]は無償労働のひとつである<ref>“[https://kotobank.jp/word/%E7%84%A1%E5%84%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D-186613 無償労働]”.知恵蔵.[[コトバンク]]. 2018年9月18日閲覧。</ref>
 
情報通信[[コンピュータネットワーク|ネットワーク]]の発展につれ、[[IT機器]]等を活用して働く[[テレワーク]]というあたらしい生活様式が出現し、労働の形態は多様化した。
150 ⟶ 155行目:
*[[リモートワーク]]
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references />
<!--=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注"}}-->
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
 
==関連項目==
*労働形態
**[[労働市場]]
**[[交代シフト勤務]]
**[[自営業]]
**[[正規雇用]]
172 ⟶ 181行目:
*[[働けば自由になる]]
*[[不法就労]]
*[[労働拒否権]]、[[不労所得]]
* 経済
** [[労働経済学]]
182 ⟶ 192行目:
** [[ブラック企業]]
** [[ワーキングプア]]
** {{ill2|アブセンティーイズム|en|Absenteeism}} - 理由のない常習的な欠勤や遅刻、会議などへの不参加。職場や当人にパワハラやイジメなどが起きている場合に発生する。
* 雑誌
** [[労政時報]](雑誌)
195 ⟶ 206行目:
*日本国が未批准の[[国際労働機関]]条約の一覧([http://www.ilo.org/dyn/normlex/en/f?p=1000:11210:0::NO:11210:P11210_COUNTRY_ID:102729 Up-to-date Conventions and Protocols not ratified by Japan]) - ILO
*[http://hito-ri.inte.co.jp/research/data/article20150805 人材の定着が会社の未来を変える。そのために、今すべきこと] - HITO総研
 
{{Normdaten}}
 
{{DEFAULTSORT:ろうとう}}