バグダード国際空港攻撃事件 (2020年)

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バグダード国際空港攻撃事件(バグダードこくさいくうこうこうげきじけん)は、2020年1月3日イラクバグダード国際空港にて発生した武力による攻撃事件。イランイスラム革命防衛隊の司令官ら8人が死亡。

アメリカ合衆国が国外で要人を暗殺し、その実施状況を公表する事件としては、ウサーマ・ビン・ラーディンの殺害アブー・バクル・アル=バグダーディーの殺害など複数例がある。

背景

2019年12月27日キルクーク近郊のイラク軍基地を武装勢力がロケット弾で攻撃。アメリカの民間人1人が死亡、アメリカ兵4人とイラク治安部隊2人が負傷した。アメリカ側は、この攻撃をカタイブ・ヒズボラによるものとして非難。カタイブ・ヒズボラの拠点5カ所についてF-15で報復爆撃を行った[1]

2019年12月31日、アメリカ軍の攻撃を非難するシーア派の団体構成員らは、バグダード市内で数千人の抗議活動を展開。一部はアメリカ大使館前に集結して放火、侵入を試みるなどして暴徒化。大使館側の応戦などにより60人が負傷した[2]

マーク・エスパー国防長官は、これら攻撃の応酬をめぐりイラン(および影響下にあるヒズボラ)との関係は「一変した」と明言。場合によっては、イランへの先制攻撃もありうることを警告した[3]

攻撃

2020年1月3日、バグダード国際空港の貨物置場付近にてイスラム教シーア派の武装勢力の連合体、人民動員隊の車列がロケット弾3発による攻撃を受ける。2台の車両が炎上し、同乗していたカタイブ・ヒズボラの最高指導者(AFPの報道では人民動員隊副司令官)とされるアブ・マフディ・ムハンディス(Abu Mahdi al-Muhandis)とイラン革命防衛隊ゴドス部隊ガーセム・ソレイマーニー司令官が死亡した[4]。アメリカ側は、攻撃に無人飛行機を用いたとしている。ソレイマーニーは、レバノンもしくはシリアからバグダード国際空港に到着、車で移動を始めたところだった[5]

各国の動き・反応

アメリカ

2020年1月3日、ドナルド・トランプ大統領は自らの指示でアメリカが攻撃を加えたことを発表。イスラム革命防衛隊の司令官について、「ソレイマーニーは、アメリカの米外交官や軍人に対して邪悪な攻撃を画策していたが、われわれはその現場を押さえ殺害した」、「我々は昨夜、戦争を止める措置を取った。戦争を始める措置ではない」と説明[6]

2020年1月4日、イラク国内の緊張を受けて第82空挺師団の増派を決定。この決定により、アメリカ軍の中東への派遣規模は最大3500人に達する[7]

2020年1月4日、トランプ米大統領は、ツイッターでイランがアメリカ人やアメリカの施設を攻撃した場合は、攻撃を受けることになると警告。対象施設として52カ所に標的を定めていると明らかにした。52という数字は、1979年に発生した大使館人質事件のアメリカ人の人質と同じ数としている[8]

イラン

イスラム革命防衛隊の指導者も兼ねるアリー・ハーメネイーは、3日間の服喪とともに報復を宣言。モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相は、アメリカの国際テロ行為は非常に危険でばかげたものとツイッター上で非難、「アメリカの冒険主義がもたらすあらゆる結果の責任を負う」と警告した[9]。ヒズボラは、ソレイマーニー司令官殺害の責任を負う者に対する処罰は、世界中のすべてのレジスタンス戦士の任務との声明を発表した[10]

2020年1月4日、イラク国内の各地でソレイマーニーの葬儀が行われた後、遺体は翌1月5日にイランのアフワズ空港へ輸送。同日午後、イラン国内の葬儀が始まった[11]

脚注

  1. ^ 米、イラン後ろ盾のシーア派武装組織を空爆”. ロイター (2019年12月30日). 2020年1月4日閲覧。
  2. ^ 在イラク米大使館前の抗議行動 負傷者数が拡大”. parstoday (2020年1月1日). 2020年1月3日閲覧。
  3. ^ 空爆で死亡のイラン司令官、米国民への攻撃を画策=米国防総省”. ロイター (220-01-03). 2020年1月3日閲覧。
  4. ^ イラク首都空港に攻撃、イラン革命防衛隊の司令官ら8人死亡”. AFP (2020年1月3日). 2020年1月3日閲覧。
  5. ^ イラン革命防衛隊の司令官、米軍の空爆で死亡 ”. BBC (2020年1月3日). 2020年1月3日閲覧。
  6. ^ トランプ氏、イラン政府転覆の意図否定 司令官殺害で声明”. AFP (2020年1月4日). 2020年1月3日閲覧。
  7. ^ 米、中東に最大3500人増派へ イラン司令官殺害受け”. AFP (2020年1月4日). 2020年1月5日閲覧。
  8. ^ トランプ米大統領が警告、イラン報復なら「52カ所」を攻撃”. 2020-01-05CNN (2020年1月5日). 2020年1月5日閲覧。
  9. ^ イラン司令官を殺害 トランプ氏が命令 ハメネイ師は「報復」誓う”. 2020-01-03AFP (2020年1月3日). 2020年1月3日閲覧。
  10. ^ 米のイラク司令官殺害 前例なき作戦が生む疑問”. AFP (2020年1月4日). 2020年1月3日閲覧。
  11. ^ 米軍殺害 司令官のひつぎ イラン到着 午後に葬儀”. NHK (2020年1月5日). 2020年1月5日閲覧。