先週、公開されると同時に、大きな話題を集めたのが、稲垣吾郎主演・三谷幸喜原作・脚本の映画「笑の大学」です。この作品の舞台は、昭和初期の浅草。日中戦争の最中…芝居を見てバカ笑いするなど不謹慎だとされたこの時代に、稲垣扮する喜劇作家と役所広司演じる冷酷な検閲官のやり取りを描いたこの映画は、フィクションであると同時に、日本の喜劇が歩んだ悲しい現実を忠実に描いたリアルストーリーでもあるのです。そこで今回は、明治・大正・昭和のニッポンで急成長を遂げた喜劇の足跡を追いながら、戦火の中ではかなく散った、ある天才喜劇作家の運命に迫りました。 1968年、青森市郊外にある明誓寺の墓地で、人目をはばからず泣き続けるひとりの男がいました。彼の名は榎本健一。昭和初期の浅草を駆け抜け、日本中に笑いの渦を巻き起こした喜劇王・エノケンです。その功績を称えて授与された勲章を、彼は墓前に供えました。この墓に眠る人物こそ、国